60番札所横峰寺といえば愛媛県随一の遍路ころがしであり、四国八十八ヶ所霊場全体としても標高第3位の750mに位置する山のお寺さん。 そこを示す遍路石の新旧について考察してみたいと思います。
新旧遍路石から見えてくるもの
60番札所横峰寺へ向かう途中、妙雲寺の入口で見かけた新旧遍路石。 二本並んで立っています。
右の古い方の石には、
是より横峯寺迄百丁
●●かうおんじ●二十五丁
(●部分は判別できません)
一丁は約109mなので、現代の距離に変換すると 60番札所横峰寺まで約10.9km。
かうおんじは61札所番香園寺のことなので約2.7km。
後者はおおよそそれくらいの距離ですが、横峰寺までの距離とすると長過ぎる。
もう一つ、左の新しい遍路石を見てみます。
是ヨリ第六十番横峰寺六十七丁
とある。
二つを比べてみると随分距離が違うことがわかります。
これら二本の遍路石から見えてくるもの
六十七丁の上をよくご覧ください。
實測
とあります。
實測は実測、改めてちゃんと測ったという事。
これだと約7.3kmなので、この地点から横峰さんまでの距離は大体それくらいです。
では何故右の遍路石は「百丁」と示してあるのか。
これは建立した人物にしかわからない事ですが、あくまで自分的に推測させてもらうと…
■ 正確な距離を測れなかった
遍路石が建立された年代を推し量る材料として、札所番号の記載有/無がある。
四国八十八ヶ所が定められたのは江戸時代初期、真念法師によって書かれた「四国邊路道指南(しこくへんろみちしるべ・1687年)」以降。 ここには両時代のものが並べられていることになる。
前者の場合、 測量技術が未発達で正確な距離を測ることができなかった可能性がある。
■ 「遠い」ということで、ざっくりとした距離を示した
これは日本全国 よく用いられる方法。
九十九里浜 百間ぐら 千里が浜
それぞれ実際の距離に直すと、とんでもない距離。
これは長大・広大な例えとして、大きな数字で表したものになります。
他にも様々な理由が考えられますが、もしかしたら、横峰寺は大変な難所であるから生半可な気持ちでは行くことができない。
実際の距離である六十七丁を記すと見え方としては近く感じてしまう。 ここから先へ進む時はその時の自分に行くことが出来るか、今一度考えて欲しい。
踏み止まって考えるのも、そこがどんな場所なのか近隣の方々に尋ねて確認してから向かうのか。
作者がそこまで練りに練って刻んだものかどうかわかりませんが、60番札所横峰寺へは現代でも険しい道のりであることは変わりません。
距離だけでは難易度は測れませんし、無事に下山するところまで計算に入れて挑まなければいけません。
特に冬期間は雪で遍路道が埋まっていて道がわからなくなったり、0℃を下回る気温であるなど、山の中で悪天候や日没となると人命に関わります。
くれぐれも事前の情報収集や状況に応じた適切に判断された上で入山されるよう、気を付けてお参りください。
※この遍路石がある番外霊場「妙雲寺」に関しては、以下リンクの記事もぜひご覧ください。
【60番札所横峰寺への遍路道】神仏習合や歴史・遍路事情の変遷を現代に伝える「妙雲寺」<
【「妙雲寺(60番横峰寺への遍路道途中)」 地図】