豊玉姫の聖地とレイライン―屋島から新川を辿る―【「高仙山」編】
新川を遡っていくと、その源流は聖山「高仙山」の中腹に行き着きます。
讃岐平野を一望する高仙山の山腹・山麓はかつての大寺院で、豊玉姫命の新川遡上伝説との関連性も感じる聖地です。
高仙山・高仙神社
高仙山は標高627.1m、北方の展望が開け、嶽山、白山、五剣山、屋島まで一望できる。
高松平野側からもその山容が確認でき、八ヶ峰麓の勅使神社のように、高仙山を意識した聖地もいくつもあります。
※新川の起点から、嶽山までに関しては以下リンクの記事をご覧ください。
豊玉姫の聖地とレイライン―屋島から新川を辿る―【「屋島寺」「浦生」編】
豊玉姫の聖地とレイライン―屋島から新川を辿る―【「池戸八幡神社」編】
豊玉姫の聖地とレイライン―屋島から新川を辿る―【「天野神社」編】
豊玉姫の聖地とレイライン―屋島から新川を辿る―【「白山」「白山神社」編】
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豊玉姫の聖地とレイライン―屋島から新川を辿る―【「鰐河神社」「和爾賀波神社」編】
豊玉姫の聖地とレイライン―屋島から新川を辿る―【「静薬師」「空風呂」編】
豊玉姫の聖地とレイライン―屋島から新川を辿る―【「嶽山」「山大寺」「氷上八幡神社」編】

高仙山頂からの展望。嶽山、白山、屋島といった東讃の主要な聖地とともに、豊玉姫命が辿った伝説が残る新川の流れも一望できる。
山頂の一角には、高仙神社があります。
以下の由緒にあるように、和爾賀波神社との関係が深いことが明白です。
井戸村郷社和爾賀波神社境外摂社。
元禄十四年(紀元二三六一)十一月の創祀にして、元文二年九月十九日初めて神輿渡御を行ひ、爾来同日を以て祭日となす。
當日は阿波國人も参拝し殷賑を極む。
祈雨の神として旱魃の際は農民の参拝多く、亦安産の神として妊婦の崇敬厚し。

和爾賀波神社境外摂社と由緒に記される高仙神社。もともと雨乞いの祭祀場で、水神・龍神が祀られていた。かつては大規模な別当寺を擁していたことから、高仙山自体が重要な聖地とされ崇められていたことが想像できる。
かつては別当寺である高仙寺があり、山腹に多くの堂宇を擁し、さらに多くの僧兵を抱える一大勢力を成していましたが、長宗我部によって滅ぼされて廃寺となって以降、再興されませんでした。
麓の集落は、三木町の中心からだいぶ離れて隔絶された山の中ですが、規模の大きな家が多く、集落はゆったりとした雰囲気で、往時の面影を残しています。
新川を遡ってきた豊玉姫命を擁する海人族の一行は、この高仙山麓に落ち着いて、集落を成したのかもしれません。
さらに、南の阿波国とも結びつきが強かったということから、阿波でも山岳地帯に住んだ忌部氏などの山人と結びついたのかもしれません。
【「高仙山 山頂」「高仙神社」 地図】
ここまで、豊玉姫命の上陸と遡上の伝説がある新川に沿って、レイラインを意識した聖地をみてきました。
新川沿いにはまだまだ聖地がたくさんありますし、山岳修験との関係や阿波との関係などをさらに調査することで、興味深い歴史が浮き彫りになってくると思われます。

内田一成

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高仙山は吉野川の支流である曽江谷川の源流でもあります。
徳島県美馬市脇町を流れる曽江谷川近くに山幸彦を祀る神社あるので阿波とのつながりを感じます。
阿波忌部は、山を本拠にしていましたから、阿波側と讃岐側との比較や共通性を見ていくと、秘められた歴史が浮き彫りになってくるかもしれませんね。