【大宝寺】戦火をくぐり抜けた愛媛県内最古の木造建築とされる国宝の本堂

愛媛県松山市にある大宝寺の本堂は、空襲のあったエリアで戦火をくぐりぬけ、現存する愛媛県内最古の木造建築とされ、国宝に指定されています。本尊は真言宗寺院としては珍しい阿弥陀如来で、平安時代作とされる貴重な仏像です。

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愛媛県内最古の木造建築とされる国宝の本堂

愛媛県松山市に古照山薬王院大宝寺(こしょうざんやくおういんたいほうじ)という寺院があります。真言宗豊山派、本尊は阿弥陀如来、大宝元年(701)に越智玉興(おちたまおき)が創建し、年号をとって大宝寺を称したと伝わります。昭和20年(1945年) の空襲で本堂を残して焼失し、記録も失われたため詳細な沿革は不明になっています。

JR松山駅から西へ約500mに位置し、松山総合公園に隣接しています。

大宝寺の本堂は桁行3間、梁間4間と、けっして大きい建築物ではありません。軒は一重、 寄棟(よせむね)造、本瓦葺の屋根で、様式から鎌倉初期の建立とみられます。一間四面堂が変化した形で、母屋方の1間の柱間が大きく、正面と背面の側柱の柱間寸法が一致していません。これらの仕様から新旧の様式が混在して用いられていると判断されています。

愛媛県内最古の木造建築とされ、国宝に指定されています。約800年建ち続け、しかも松山市では空襲があったので、空襲を逃れてのこっていることは珍しく、困難や災難を乗り越えてきた縁起の良いパワースポットとしても認知されています。

寺院の本堂が国宝に指定される場合は大型のものが多いので、全体を観察するのに時間と労力がかかりますが、この大宝寺の本堂は全体が視界に入りやすいコンパクトなものなので、理解しやすくわかりやすいメリットがあります。

堂内には本尊の阿弥陀如来坐像、釈迦如来坐像、行基作と伝えられる薬師如来像が安置されています。

大宝寺_本堂

国宝指定の建造物の中では比較的コンパクトな本堂は特徴をつかみやすいです。春には桜とのコントラストも見られます。

 

国指定重要文化財の木造阿弥陀如来坐像と木造釈迦如来坐像

大宝寺には平安時代作と伝わる木造阿弥陀如来坐像が2体と木造釈迦如来坐像が1体あり、いずれも国指定重要文化財です。

阿弥陀如来は他力本願(たりきほんがん)の仏さまとして知られています。他力本願とは本来、「人間の力など仏さまに比べればたかが知れている。人間の努力で成仏できるなどと過信せず、阿弥陀如来にすべてを任せるのが本願」という意味で、浄土宗の法然上人(ほうねんしょうにん)や浄土真宗の親鸞聖人(しんらんしょうにん)によって開かれた鎌倉仏教の浄土系に多い仏さまです。特に浄土真宗では本尊が阿弥陀如来でないというケースは聞いたことがありません。

真言宗では宇宙の中心とされている大日如来か、大日如来の脇侍で開祖・弘法大師空海の念持仏の不動明王が本尊に据えられていることが多く、薬師如来や釈迦如来、観音菩薩など多様ですが、阿弥陀如来が本尊というのは珍しいです。

大宝寺の木造阿弥陀如来坐像のひとつは昔は薬師如来とされ、秘仏になっていました。

阿弥陀如来坐像

阿弥陀如来坐像の例です。西方浄土の教主とされています。

 

大宝寺は、四国八十八ヶ所霊場巡礼においては、51番札所石手寺52番札所太山寺の間の立地で、松山市街地で宿泊や観光で滞在する人も多いと思いますので、貴重な古建築である本堂や、長い歴史を見守ってきた仏像を拝観しに立ち寄ってみてください。

 

【「大宝寺」 地図】

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この記事を書いた人

建築・不動産・旅のテーマが得意なライター。社寺系ゼネコンに勤務経験があり、四国八十八ヶ所霊場の札所建築物の改修工事に携わったことがあります。仏教に興味があり、2022年には四国のお遍路巡礼もしました。ライターとは別名義で作家として小説も書いています。