愛媛県南部の「南予」地方は、峠越えが続く難所ですが、江戸時代に栄えた歴史ある街に古い建造物が残り、風情を感じる道のりです。南予の歴史ある街並みによく似合う「丸型ポスト」の数々をまとめてみました。
四国山地が東西に走り、独自文化が発展した「南予」地方
愛媛県は歴史的・政治的・行政区の観点で、大きく「東予」「中予」「南予」の3つ地域に分割して語られることが多く、そのうち南部の大洲市、八幡浜市、宇和島市、西予市、喜多郡(内子町)、西宇和郡(伊方町)、北宇和郡(鬼北町・松野町)、南宇和郡(愛南町)で構成されるのが「南予(なんよ)」地方です。
南予の地形は四国山地が東西に走り、山に囲まれた盆地に海岸はリアス式の断崖絶壁。それぞれの盆地に形成された農地や町ごとに文化が発展し、山を越えなければ他地域に移動できなかったことから、独自性の強い文化がそれぞれの地域で継承されているといわれています。
遍路道においては、いくつもの峠を越えながら次の町に進んでいく難所であると同時に、それぞれの町に歴史を感じる風情ある街並みが続きます。
特に江戸時代に城下町として、また農業や商業で大きな発展を遂げた町が多く、しかも当時の建造物が残っている地域があり、屈指の観光エリアでもあります。
そんな「南予」に、私が遍路旅を通じて注目していた「丸型ポスト」がたくさんありましたので、まとめてご紹介します。
「丸型ポスト」=「郵便差出箱1号(丸型)」とは
ここで「丸型ポスト」とよんでいるポストですが、正式名称は「郵便差出箱1号(丸型)」です。
まずは、少しおかたいですが、基礎知識から。
日本で郵便制度が始まったのは明治4年(1871年)年で、このときに日本で最初のポストも誕生しました。
当初は木製の簡易なものでしたが、明治34年(1901年)に火事に強い鉄製の赤色丸型ポストができました。
こポストを「赤色」に塗ったのはポストの位置をわかりやすくするため、かどを丸くしたのは通行のじゃまにならないようにという理由からでした。
昭和の戦時体制下では物資不足のため、コンクリートや陶器など、代用の資材を用いたポストが出現しましたが、昭和20年(1945年)に終戦をむかえ、再び鉄製ポストが製造され始め、全国的に普及したのが「郵便差出箱1号(丸型)」です。
その後、ポスト内に収集袋を吊り下げることにより効率よく回収できる「角型ポスト」が開発されたことにより、昭和45年(1970年)に丸型ポストの製造・設置が終了し、現存する丸型ポストは全国で5000~6000基といわれていて、昭和初期の歴史を感じられるある意味「文化財」となっているのです。
今ではマニアともよべるような「丸型ポストファン」もいるほどのようですが、私は遍路を始めるまで興味があったわけではなく、たまたま丸型ポストが好きな知人がいたことと、遍路出発地点のJR板東駅に丸型ポストがあったことがきっかけで、遍路道沿いの丸型ポストに着目するようになりました。
※遍路スタートのJR板東駅の様子は、以下記事もぜひご覧ください。
【JR高徳線板東駅→1番札所霊山寺】遍路初心者立ち寄り必須の店
宇和島名物のじゃこ天屋の店先一等地に鎮座する「丸型ポスト」
南予で最初に見つけた丸型ポストは、宇和島市に入り、津島町から宇和島市中心街に進むために越える「松尾峠」の手前で休憩に立ち寄った「道の駅津島やすらぎの里」にいらっしゃいました。
※「松尾峠」と「道の駅 津島やすらぎの里」の様子は、以下リンクの記事もぜひご覧ください。
【旧津島町→宇和島市街】二度目の「松尾峠」越えは自然満喫のあとに採石場内を通るワイルドな遍路道
【「道の駅 津島やすらぎの里」 地図】
「道の駅みま」の木のぬくもりを感じる大きな建物に溶け込むようにたたずむ「丸型ポスト」
続いて、また「道の駅」にいらっしゃいました「道の駅みま」の丸型ポストです。
南予地域は道の駅が充実していて、地域の観光拠点になっていて、建物も立派なところが多かったです。
それが関係してか、道の駅の景観にマッチする丸型ポストをあえて設置しているところがあるようです。
※「道の駅 みま」の様子は、以下リンクの記事もぜひご覧ください。
【宇和島市街→41番札所龍光寺】三間町への地味に辛い登りのあとは旧遍路道で「道の駅みま」へ
【「道の駅 みま」 地図】
江戸時代の街並みが似合いすぎている宇和町卯之町の丸型ポスト
3つめの丸型ポストは、江戸時代の建造物が多く残り、重要伝統的建造物群保存地区に指定されている43番札所「明石寺」近くの「宇和町卯之町」にいらっしゃいました。
丸型ポストがいらっしゃった「宇和民具館」やそのすぐ近くの「開明学校」など、観光施設が多いエリアでもありますので、お時間がある方はゆっくり散策されるとよいと思います。
※「宇和町卯之町」の様子は、以下リンクの記事もぜひご覧ください。
【宇和町卯之町】「明石寺」近くは四国西部の要所で重要伝統的建造物群保存地区
【「宇和民具館」 地図】
大洲の古い街並みで遍路道標とともに道案内をしてくれる「丸型ポスト」
4つめの丸型ポストは、「肱川(ひじかわ)」流域の豊富な資源と、「大洲城」の城下町として発展した大洲市中心街の江戸時代の街並みが残る地域にいらっしゃいました。
遍路道の分岐交差点にいらっしゃって、遍路道標と一緒に道案内をしてくれる働き者の丸型ポストでした。
※「大洲市街」の様子は、以下リンクの記事もぜひご覧ください。
【愛媛県大洲市】肱川の流域の盆地に広がる「伊予の小京都」を歩く
【大洲市街 江戸時代の街並み「丸型ポスト」 地図】
JR内子駅の風情のある駅前にたたずむ「丸型ポスト」
5つめの丸型ポストは、JR内子駅前で、風情のある駅名看板や、レトロバス「ちゃがまる」、蒸気機関車「C12 231」と一緒にたたずんでいらっしゃいました。
内子町は、江戸時代にハゼを原料にた木蝋と和紙の生産で栄えた町で、昔の商家・民家建築物が残る「八日市護国」地区は、「宇和町卯之町」と同様に重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。
※「内子町」の様子は、以下リンクの記事もぜひご覧ください。
【内子町八日市護国】ハゼを原料に木蝋と和紙の生産で財をなした重要伝統的建造物群保存地区
【JR内子駅 地図】
昔風の建物が並ぶ街並みに完全に溶け込んでいる大瀬郵便局の「丸型ポスト」
南予最後の6つめの丸型ポストは、内子町から山に入っていた「大瀬(おおせ)」の集落の「大瀬郵便局」にいらっしゃいました。
大瀬はノーベル文学賞作家、大江健三郎の出身地とのことで、かなりの山の中なのですが、昔風の建物が並ぶ商店街は活気を感じました。
※「大瀬」の様子は、以下リンクの記事もぜひご覧ください。
【愛媛県内子町】無料宿泊情報多数!内子町の遍路小屋・休憩所・お堂セレクション
【「大瀬郵便局」 地図】
「南予」の遍路道は見どころがたくさんあって、その要所で「丸型ポスト」が必ずいらっしゃるという、丸型ポストファンにとっては見逃すわけにはいかないエリアです。
一方で峠越えが続く難所でもあり、それぞれのスポットでいろいろな出来事がありましたので、各スポットの記事もぜひご覧ください。
※「南予」地方以外の「丸型ポスト」に関しては、以下タグの記事もあわせてご覧ください。