27番札所神峯寺の東約10kmの遍路道に位置する奈半利町には、近代産業の発展期に建てられたたくさんの歴史的建造物が残っています。これらの建物を舞台にした、あるアートイベントに出会いました。
奈半利町のまちづくりイベント「なはり古民家Art&Live2019」に出会う
室戸三山の最後である26番札所金剛頂寺(こんごうちょうじ)を過ぎると、27番札所神峯寺(こうのみねじ)まで約30kmの距離を進むことになります。その間にいくつかの町を通りますが、その町の中のひとつ、神峯寺から10kmほど手前にある奈半利(なはり)町で、偶然とあるアートイベントに出会いました。
高知県内外で活躍している現代美術作家11名による多様な表現の作品(映像・平面・立体等)と古民家のコラボをお楽しみください(なはり古民家Art&Live2019パンフレットより)。
国道55号線沿いに見つけて入った古民家カフェがちょうど会場だったため、偶然知ったイベントです。奈半利町には近代産業の発展期に建てられたたくさんの歴史的建造物(登録有形文化財)があり、そのうち7つの建物を活用してアート作品を展示するイベントとのことでした。
手描きの地図を元に、各古民家を巡ってスタンプを集める仕組みになっています。全部回っても2時間程度というので、参加してみることにしました。
近代産業の発展を感じる建物たち
イベントの見どころは、会場でありアートでもある歴史的建造物です。それぞれの建物を見ていくと、奈半利の歴史や近代産業の発展を肌で感じることができます。
時間をかけて見学した「藤村製絲記念館」
個人的に興味深かったのは、近代の日本の絹文化を支え続けた藤村製絲(ふじむらせいし)工場跡地にある藤村製絲記念館。ここでは大正6年の創業以来、平成17年まで製糸業を続けていたとのことです。ちなみに藤村製絲株式会社は、製糸業を終えた現在も不動産業を中心に営業を続けています。記念館の隣に会社があるので、記念館では社員さんが対応してくださいました。
記念館の中にある作家の作品を拝見しつつ、建物の中を奥へと進みます。
ここで何より圧巻だったのは製糸工場の歴史が詰まった展示室。実際に稼働していた製糸工場の機械たちとともに、社員さんの写真が壁一面に並んでいました。繭玉から絹糸を取り出す工程を見つつ、工員さんたちの表情に当時の労働環境を読み取ったりと、しばしの時間、見学にふけりました。
展示を見る中で、藤村製絲株式会社は近代捕鯨にも関わるなど、事業範囲は多岐にわたっていたこともわかってきます。展示品である捕鯨のモリなどを見ながら、つくづく高知は捕鯨の土地なのだなぁという思いを深めました。
スタンプラリーを集めていただいた記念品
アート展示会場は全部で7つ。それぞれの家の歴史をうかがいながら全ての建物を回ってきました。場所場所で可愛いスタンプをいただいて完成したのがこちら。
赤い金魚みたいなものは室戸周辺の名物「金目鯛」のマグネットです。スタンプラリーをクリアしたら記念品としていただけます(手作りの品で、なかなかいい表情をしていますね)。
上記の邸宅や記念館の他に、普通の家の生活の場(路地)が会場だったり、店舗の倉庫の二階に映像展示があったりと展示内容も会場もバリエーションに富んでいました。イベントとは偶然の出会いでしたが、奈半利の町と歴史を知るいい機会となりました。
このイベントの運営は「なはり浦の会」という市民活動団体が行っています。街並みガイドやまちづくり活動、登録有形文化財制度を使った建物の保存などを活動内容としている団体とのこと。最新情報はfacebookの方に掲載されているので、気になる方はチェックしてみてはいかがでしょうか。
なはり浦の会HP https://www.neconote.jp/machinami/
なはり浦の会facebook https://www.facebook.com/uranokai/
札所間の距離の長い高知の中で、一直線に次の札所を目指すか途中の町を見て歩くかは、それぞれの旅のスタイルで異なってくると思います。奈半利町には遍路のルートからほど近い場所に古民家が点在しているので、興味のある人は少し足を伸ばして古民家巡りを楽しむのも良いかと思います。
【「藤村製絲記念館」 地図】