10番札所切幡寺の石段・坂道を下ってからは、11番札所藤井寺まで少し遠い10km弱の道のりです。道中では、川の中洲の「善入寺島」を通過する珍しい遍路道で、日本三大暴れ川のひとつ「四国三郎」と呼ばれる「吉野川」を渡ります。
初の長距離歩行
1番札所霊山寺から10番札所切幡寺までは、札所間が比較的短い距離で、参拝をどんどん積み重ねていきますが、10番札所を出発してからは初の長距離歩行と言える10km弱の道のりになります。
しばらく見かけなかった飲食店や商店、休憩所もいくつかありますので、無理せずゆっくり休憩をとりながら進みたい遍路道です。
11番札所藤井寺にたどり着くまでには、遍路道の中でも珍しい川の中の中洲になっている島を通過することになります。
日本三大暴れ川「四国三郎」と呼ばれる「吉野川」
ここで渡る「吉野川」は、愛媛県西条市と高知県本川村(現:いの町)に頂を有する瓶ヶ森(標高1896.2 m)より湧き出ていて、水流が四国四県にまたがる四国の大河です。
昔から洪水や水害が多い「暴れ川」で、利根川(坂東太郎)・筑後川(筑紫次郎)と並び四国三郎(しこくさぶろう)の異名を持つ日本三大暴れ川のひとつとされています。
日本最大級の川中島「善入寺島(ぜんにゅうじとう)」を「潜水橋」で渡る
この大きな吉野川を渡っていくのですが、川の渡り方が珍しいのです。
ただ橋で渡るということではなく、川の中洲になっている「善入寺島」に橋で入り、島の中をしばらく歩いて、島から出る橋を渡って、対岸にたどり着きます。
島に出入りする橋が、これまた珍しい「潜水橋」です。
潜水橋とは、河川で普段水量が少ない状態で常に水が流れている場所を渡るために低い位置につくられている橋のことで、増水時には川の中に沈んでしまいます。
道路のような橋で川を渡って島に入っていくのは、不思議な感じがします。増水時で橋が沈んだ時に、流木や土砂で破損しづらいように、欄干は何もありません。
潜水橋で渡る川中島の善入寺島は、広さが約500ヘクタールもある日本最大級の川中島とのこと。大正時代までは人が住んでいたそうですが、現在は農地だけの無人島なんだそうです。
確かにひたすら田畑の中を通るのですが、農作業をされている方がたくさんいらっしゃったので、無人島だとは思いませんでした。
私は大河である吉野川を渡るということで、かなりの水量と幅を思い描いていたので少し拍子抜けしたのですが、潜水橋や川中島のことを調べると、常には水量が少ないところを渡るので、この景色も納得できました。
橋や島も含め、吉野川の別の顔を楽しみたいものです。