室戸において空海が修行していたとされる場所は三か所伝えられており、どれも海沿いの海食洞窟が舞台になっています。そのうちの一つ、行道不動は室戸世界ジオパークとつながっていて、修行当時を感じさせる荒々しい自然が体験できます。
三か所ある空海修行の場と海岸線の位置
若き空海が修行していたとされる高知県室戸岬周辺は、100〜150年周期の南海地震や数千年周期の大地震で土地の隆起を繰り返しており、その地質的特徴と独自の生活文化は、2011年にユネスコ世界ジオパークに認定されています。
室戸ユネスコ世界ジオパークHP https://www.muroto-geo.jp
この隆起し続ける土地が空海の修行の舞台ですが、実際に修行していた場所として最も知名度の高い御厨人窟(みくろど)以外にも、24番札所最御崎寺の奥の院「一夜建立の岩屋」、26番札所金剛頂寺の奥の院「行道不動(ぎょうどうふどう)」なども修行地であったと伝えられています。
今あげた三つの行場は、そのどれもが海水の侵食を受けてできた海食洞窟で、海にほど近い場所に位置しています。また、空海が修行した1200年前から現在にかけて、陸地全体が5mほど隆起したことがわかっており、空海の修行時代はもっと海岸線が近かったことが想像されます。
このような室戸の地質的特性を知った上で現地におもむくと、空海が修行した時代の景色をよりリアルに想像できると思います。
26番札所金剛頂寺の奥の院「行道不動」
修行当時の海岸線は現在より5m高い場所にあった・・・そんなイメージを持ちながら、空海修行の場の一つである「行道不動(ぎょうどうふどう)」に向かってみます。26番札所金剛頂寺から4キロほど離れた場所にあって、室戸ジオパークのひとつである「新村(しむら)遊歩道」に隣接しています。
三か所ある修行の地の中で、最も海に近い場所です。
金剛頂寺は明治初期まで女人禁制だったため、女性はこの行道不動で納経をしていたそうです。
いざ、空海修行の場所へ!
空海が修行していたのは、不動堂の裏にある海沿いの洞窟(不動岩)です。早速行ってみることにしました。
不動岩には洞窟が二つあり、西の洞窟が空海がこもって修行した場所といわれています。西の洞窟から外を眺めた景色が下の写真です。
空海が修行した当時はもっと海岸線が近かったはずで、空海が悟りを開いたときに目に入った景色が空と海だった、という伝承がリアルに感じられます。若き空海が見た景色を垣間見たような気持ちになりました。
隣接する新村遊歩道でジオパーク体験
この洞窟とジオパークの遊歩道は繋がっていて、そのまま遊歩道まで歩いていくことができます。振り返って洞窟のあった場所を見ると、とても厳しい環境にあることがわかります。
後世には、空海を慕う修行僧たちの行場にもなっていたようです。
ジオパークの遊歩道はきれいに整備されているので快適に歩けますが、目の前にあるのはダイナミックな大地の変動の痕跡。管理された遊歩道なのに、むき出しの自然を前にして少し緊張がはしります。
遊歩道は全長200mにも満たない長さで、行道不動のお参りついでに気軽に散策することができます。アクセスは簡単でもそこで見られる大地の様相はかなりダイナミックで、その力強さに圧倒されます。若き空海がこの地を修行の場に選んだのも、このむき出しの自然があればこそ、だったのかもしれません。
行道不動から続く海の景色とジオパークのむき出しの自然を体験して、若き空海がこの地を修行の場に選んだ理由がわかるような気がしました。永きにわたって修行の場であった行道不動エリアで、空海の修行世界をぜひ体験してみてください。
【「不動岩」 地図】