【善通寺市】軍都の名残を残す近代建築と乃木希典の史跡

弘法大師空海のご生誕地である75番札所善通寺の周辺は、旧陸軍が駐屯する軍都として栄えた時代がありました。その名残である近代洋風建築と日露戦争で活躍した乃木希典の史跡をご紹介します。

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軍都「善通寺市」の歴史

75番札所善通寺の門前町としての歴史を持つ善通寺市は、同時に四国最大の軍都として栄えた歴史をもつ街でもあります。

富国強兵をすすめていた明治28年(1896年)、四国における最重要軍事拠点として善通寺村(当時)に旧陸軍第11師団の基地が設置され、軍事都市としての善通寺市が形成されていきました。戦後は旧陸軍の施設及び敷地が陸上自衛隊の駐屯地に引き継がれましたが、その間に建てられた旧陸軍関連の勇壮な洋風建築は市内に残され、現在の善通寺市の景観を作っています。
弘法大師空海のご生誕地ならではの霊場が点在する寺町に、旧陸軍が残した西洋建築や自衛隊施設が重なる独自の景観が、善通寺市の特色となっています。

善通寺_軍都

この記事では、75番札所善通寺周辺で見学可能な旧陸軍関連施設をご紹介していきます。旧陸軍将校の社交施設や、旧陸軍第11師団の初代師団長だった乃木希典の史跡など、見どころがたくさんあります。善通寺の参拝に合わせて、周辺の多層的な魅力を発見してみてください。

❶ 旧陸軍第11師団兵器庫 ❷ 乃木館 ❸ 旧善通寺偕行社 ❹ 偕行社かふぇ ❺ 乃木神社 ❻ 善通寺市観光交流センター ❼ 足湯(供侍の湯) — 善通寺ゆうゆうロード

 

赤煉瓦の旧武器庫と善通寺ゆうゆうロード

善通寺の東院にある南大門は日露戦争の戦勝記念に再建されたもので、騎乗したまま門をくぐれるように高さのある造りになっています。その南大門から南北に伸びる道は「善通寺ゆうゆうロード」と名付けられ、自衛隊の駐屯地や旧陸軍が残した赤煉瓦の武器庫が並ぶ通りです。

75善通寺南門

善通寺東院の南大門。

善通寺ゆうゆうロードで目立つ赤煉瓦の建物は、旧陸軍第11師団の兵器庫として使われていた建物で、現在は陸上自衛隊の倉庫として使用されているようです。自衛隊の現役施設のため内部の見学はできませんが、旧陸軍のシンボルとして当時の雰囲気を今に伝える建物です。

善通寺ゆうゆうロード

赤煉瓦倉庫と五重塔が並ぶ善通寺ゆうゆうロードは、自衛隊の駐屯地に挟まれています。

 

乃木館(陸上自衛隊善通寺駐屯地資料館)

陸上自衛隊の駐屯地内にある「乃木館」は、明治時代に旧陸軍第11師団の司令部が置かれていた建物で、現在は資料館として公開されています(誰でも見学ができますが、入口で自衛官さんが門番をしていて住所等の記入が必要です)。
乃木館までの長いアプローチの横には戦車や戦闘機が展示されており、実際に使われていた自衛隊装備を間近に見学できます。

乃木館の並木と展示物

乃木館のアプローチに並ぶカイズカイブキは、日露戦争の戦勝記念に植えられたもの。横には自衛隊の展示物が並んでいました。

乃木館

乃木館全景。立派な建物です。

長いカイヅカイブキの並木を抜けて見えてきた乃木館は、少し建物の痛みがあるものの、和洋折衷の勇壮な建物でした。内部は資料館になっていて、乃木希典をはじめとする旧陸軍関係の資料が展示されています。また自衛隊の音楽隊が同館を使用しているそうで、自衛官が出入りする様子もみられました。

乃木館と音楽講堂

乃木館の横にある古い建物には「音楽講堂」の看板がありました。

乃木館
※2021年12月から2026年4月まで改修工事のため休館
住 所 :香川県善通寺市南町2-1-1
電 話 :0877-62-2311(善通寺駐屯地広報)
営業時間:9:00~12:00、13:00〜16:00(要予約、人数制限あり)水・土・日祝 定休

 

旧善通寺偕行社

善通寺市役所のすぐ横にある「旧善通寺偕行社」は、旧陸軍将校たちの社交場として明治36年(1903年)に建てられたもので、現在は国の重要文化財に指定されています。内部は一般開放されており、10:00〜16:00の間に無料で見学できるほか、大広間や会議室は貸切利用が可能です。

善通寺市役所ホームページ「旧善通寺偕行社」:
https://www.city.zentsuji.kagawa.jp/soshiki/50/kaikousya.html

旧善通寺偕行社

旧陸軍の社交場として作られた善通寺偕行社。

偕行社会議室

優美なインテリアの会議室は貸切利用が可能。

偕行社内部

大広間は音楽会やブライダル会場に利用されています。

旧善通寺偕行社 住 所 :香川県善通寺市文京町2丁目1-1
電 話 :0877-63-6362
見学時間:10:00〜16:00(貸切時は見学不可)

 

偕行社かふぇ

旧善通寺偕行社には「偕行社かふぇ」が隣接しており、モーニングからランチ、軽食まで楽しめるカフェになっています。偕行社とば別棟ですが中で繋がっているので、偕行社見学もこちらの入口を使います。
「偕行社かふぇ」にブライダルを依頼することもでき、旧善通寺偕行社を会場に挙式や披露宴を開くことができます。

偕行社かふぇ入口

旧善通寺偕行社に隣接する「偕行社かふぇ」の入口。

偕行社かふぇ

モーニング、ランチ、カフェメニュー各種揃っています。

偕行社かふぇ 住 所 :香川県善通寺市文京町2丁目1-1
電 話 :0877-62-4906
営業時間:8:30~17:00 (17:00~21:00は予約により営業)

 

乃木神社

明治維新以来の戦没者を慰霊する香川縣護國神社(讃岐宮)の北側に隣接して、乃木希典および静子夫人を祀る乃木神社があります。幕末〜明治期に活躍し、のちに軍神として祀られた乃木希典(のぎまれすけ)は明治31年(1898年)に旧陸軍第11師団の初代師団長に着任しており、善通寺市にもゆかり深い人物です。死後、乃木将軍の生き様を慕う人々の手で乃木神社が各地に建てられるようになり、善通寺市には昭和10年(1935年)に造営されました。

讃岐宮(香川縣護國神社)

五岳山のひとつ「我拝師山」を背負う香川縣護國神社(讃岐宮)。

乃木神社

乃木神社は簡素なつくりながら重厚な雰囲気がある神社です。

乃木神社
香川縣護國神社(讃岐宮)
住 所 :香川県善通寺市文京町4丁目5−3
電 話 :0877-62-0048(香川縣護國神社)

 

善通寺市観光交流センター/供待の湯(足湯)

善通寺の東門(赤門)から出て2分ほどの場所にある「善通寺市観光交流センター」は、旧陸軍の将校たちをもてなした料亭旅館を改装した公営施設です。見学は無料で、和室や宴会場のしつらえに軍都として栄えた当時の雰囲気を感じることができます。また、将校のお供が休憩していた場所が足湯スポット(供待の湯)になっていて、ゆっくりと足を休めることができる休憩スポットにもなっています。
時間貸しを行っている和室や宴会場では持ち込みの飲食が可能で、コスプレ撮影会や寄席など様々なイベントに利用されています。

善通寺市役所ホームページ「善通寺市観光交流センター&供待の湯(足湯)」:
https://www.city.zentsuji.kagawa.jp/site/infocorona/kankoukouryucenter.html

善通寺足湯

足湯「供待の湯」と善通寺市観光交流センターの外観、大広間など。

善通寺市観光交流センター 住 所 :香川県善通寺市善通寺町2丁目8−23
電 話 :0877-64-1250
営業時間:9:00〜19:00(水曜定休)
 
このほかの善通寺周辺「見どころ情報」はこちら

 

弘法大師空海のご生誕地である寺町として、また軍都としても栄えた歴史を持つ善通寺市は、寺院と西洋建築が織りなす不思議な景色が見られる場所です。長い信仰の歴史と軍事化の足跡が重なり、視点の数だけ見え方が変わる、深みある街だと感じます。

 

❶ 旧陸軍第11師団兵器庫 ❷ 乃木館 ❸ 旧善通寺偕行社 ❹ 偕行社かふぇ ❺ 乃木神社 ❻ 善通寺市観光交流センター ❼ 足湯(供侍の湯) — 善通寺ゆうゆうロード

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この記事を書いた人

札幌で生まれ育ち、東京にて都市計画コンサルタントに従事。結婚を機に香川に移住し、地方自治体勤務などを経て現在に至る。お遍路文化を通じた新しい四国の楽しみ方を模索しています。日本酒とワインが好き。