【鳴門海峡】世界三大潮流のひとつ「鳴門の渦潮」

四国の玄関口である徳島県鳴門市と兵庫県淡路島の間の「鳴門海峡」は、世界三大潮流のひとつとされ、激しい潮流が生み出す「鳴門の渦潮」が有名で、瀬戸内海国立公園の一部にも指定される風光明媚な名所です。

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世界三大潮流のひとつ「鳴門海峡」と「鳴門の渦潮」

四国では、香川県、徳島県、愛媛県の3県の一部が属する「瀬戸内海国立公園(せとないかいこくりつこうえん)」は、昭和9年(1934年)に日本で最初に国立公園として指定されました。瀬戸内海および海域が面する陸地の中で、特に自然が生み出す風景が美しい地域で構成され、瀬戸内海国立公園は日本の国立公園の中でもっとも広い範囲が指定されています。

その指定範囲に、徳島県鳴門市と兵庫県淡路島の間の「鳴門海峡(なるとかいきょう)」が含まれています。
鳴門海峡は徳島県鳴門市の孫崎(まごさき)と兵庫県淡路島の門崎(とさき)との二つの岬で極端に狭められた幅約1.4kmの海峡です。満ち潮で紀伊水道から大阪湾・明石海峡・播磨灘に入った海水は約6時間で満潮となって鳴門海峡から流れ出します。この時、紀伊水道はちょうど干潮にあたり外海に流れます。鳴門海峡で播磨灘の満潮と紀伊水道の干潮が重なり、しかも、流れの方向が一致して急になり、満潮と干潮の落差は最大1.5mになるといいます。これに加えて、海底地形の中央部が深く切れこみ、流れが中央は速く、沿岸は遅くなり、速い潮と遅い潮の速度差で渦が生み出され、その様子が「鳴門の渦潮(なるとのうずしお)」と呼ばれて、昔から名所とされ、「世界三大潮流」のひとつともいわれています。

鳴門海峡は古代から知られ、10世紀の紀貫之の「土佐日記」 には、海賊におびえ、しきりに神仏に安全を祈る航海が描かれています。瀬戸内海から夜中に行動を開始し、阿波の水門 (鳴門海峡)を夜半に横切り、早朝に沼島を通過し、現在の大阪府と和歌山県の県境辺りの深日(ふけ)に到着したと記載されています。
古代の鳴門海峡は恐怖の風景で、楽しむどころではなかったのです。近世になって旅が盛んになり、好奇心から鳴門海峡をわざわざ見に出かける人物が現れます。江戸時代の談林派俳人の大淀三千風(おおよどみちかぜ)の元禄3年(1690年)の紀行文「日本行脚文集」にその様子が生き生きと描かれています。三千風は全国を旅して、富士山、立山、白山、阿蘇山、雲仙岳などに登り、本朝十二景を選定した人です。
三千風の見た鳴門海峡の風景は、激しい海流の轟音がとどろく音の風景であり、まさしく音が「鳴る門」でした。 文久2年(1862年)の暁鐘成(あかつきかねなり)の「雲錦随筆(うんきんずいひつ)」でも「常に鳴るを以て鳴門といふ」 と伝えています。
鳴門の風景が広く評価されるのは江戸時代後期のことでした。歌川広重の嘉永6年(1853年)頃の「六十余州名所図会(ろくじゅうしゅうめいしょずえ)」や、「阿波名所図会」を模した「阿波鳴門之風景」 などで広く普及していきます。

鳴門海峡_鳴門の渦潮

激しい海流が渦巻く鳴門海峡。

 

鳴門海峡の観光名所

鳴門海峡一帯は、鳴門公園として瀬戸内海国立公園の一部に指定されており、現代の鳴門公園の魅力は、様々な高さ・方角からの展望台が整備されていて、渦潮と大鳴門橋(おおなるときょう)の景色を満喫できることです。公園内には、渦潮と大鳴門橋を見られる展望地が整備されています。これらのビューポイントは徒歩で巡ることができる範囲に距離に点在しており、中でも千畳敷展望台(せんじょうじきてんぼうだい)は、鳴門海峡全体を見渡すことができることで有名です。

鳴門海峡_展望台_大鳴門橋

展望台からの鳴門海峡と大鳴門橋の景色は唯一無二の絶景です。

展望台の他にも、亀浦観潮船乗り場、大鳴門橋架橋記念館エディ、大鳴門橋遊歩道渦の道、エスカヒル鳴門、大塚国際美術館、伍代夏子「鳴門海峡」歌碑などが観光スポットとして知られています。

昭和60年(1985年)に完成した大鳴門橋は、潮流に悪影響を与えないように多柱基礎構造とし、後に車道の下層の鉄道予定路面を人が歩いて、橋上から渦潮を見下ろすことができる海上遊歩道「渦の道」としました。陸地から橋上遊歩道を約450m進んだ先にある展望室にはガラス張りの床があり、約45mの高さから、渦潮を覗き込むことができます。渦潮は潮の満ち引きの状況によって発生時間が毎日変わるので、渦潮を確実に見たいのであれば、事前に発生時間を確認しておくことが必要です。

隣接するミュージアム「大鳴門橋架橋記念館エディ」では、渦と橋が展示テーマで、360度4KシアターやVR体験、LEDデジタルアートなどで、鳴門海峡の自然を楽しむことができ、子どもから大人まで幅広い層に人気です。
「エスカヒル鳴門」は、鳴門山展望台へ続く全長68m・高低差34mのエスカレーターで、四国4県のみならず、関西近畿9府県の中でも最長です。
「亀浦観潮船乗り場」からは、渦潮を船上からみることができる観潮船が発着しています。
「大塚国際美術館」は、鳴門市が創立の地である大塚製薬グループが創業75周年事業として平成10年(1998年)に開館した陶板複製画を中心とした美術館で、広大な館内には膨大な数の美術品が展示されており、じっくり鑑賞していると1日では回り切れないほどです。
※大塚国際美術館に関しては、以下リンクの記事で紹介されていますので、こちらもぜひご覧ください。

【大塚国際美術館】西洋名画の複製が展示されている日本最大級の陶板名画美術館

 

かつてのお遍路さんは、鳴門海峡に面する撫養(むや)港に船で四国に上陸し、撫養街道を歩いて、1番札所霊山寺に向かいお遍路を開始していたとされます。現代でも関西方面から車で四国にアクセスする場合は、鳴門海峡を渡って四国に上陸するのがメインルートで、鳴門海峡・鳴門市は今も昔も四国の玄関口です。
古代は海の難所として知られていた鳴門海峡は、現代では渦潮が有名な風光明媚な場所として多くの人が訪れていますので、お遍路のスタート前やゴール後にぜひ立ち寄ってみてください。

 

【「鳴門海峡」 地図】

 

 

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この記事を書いた人

建築・不動産・旅のテーマが得意なライター。社寺系ゼネコンに勤務経験があり、四国八十八ヶ所霊場の札所建築物の改修工事に携わったことがあります。仏教に興味があり、2022年には四国のお遍路巡礼もしました。ライターとは別名義で作家として小説も書いています。