【金刀比羅宮】名高い絵師の障壁画がのこされている書院と現存最古の芝居小屋

金刀比羅宮は「こんぴらさん」として有名な香川県を代表する神社であり観光地です。数々の見どころの中で、国の重要文化財に指定されている「金刀比羅宮表書院・奥書院」と「旧金毘羅大芝居(通称:金丸座)」をご紹介します。

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「金刀比羅宮」とは

香川県琴平町にある「金刀比羅宮(ことひらぐう)」は、海上安全の神として1000年近い歴史があり、「さぬきのこんぴらさん」として知られています。江戸時代に社寺参りが全国的に流行した際に、「こんぴら詣で」として名が知れ渡り、多くの参拝者を迎え、現代にも参詣文化が引き継がれています。
元は金毘羅大権現(こんぴらだいごんげん)を祀っていましたが、明治時代の神仏分離・廃仏毀釈によって現在のご祭神は大物主命(おおものぬしのみこと)となっています。参道の長く続く石段が有名で、奥社まで1368段もあります。全国に約600ある金刀比羅神社、琴平神社あるいは金比羅神社の総本宮です。

アクセスは、JR土讃線の琴平駅から徒歩約10分程度で門前町に到着し、そこから長い石段を登って本殿を目指します。高松市方面からは、こんぴら参りの参詣電車が起源のことでん琴平線があり、終点の琴電琴平駅が最寄駅です。
弘法大師空海の生誕地である75番札所善通寺がある善通寺市の隣町が、金刀比羅宮がある琴平町なので、昔は四国八十八ヶ所霊場を巡るお遍路さんの多くが金刀比羅宮にも立ち寄っていたそうです。

 

名高い絵師の障壁画がのこされている「金刀比羅宮表書院・奥書院」

たくさんの見どころがある金刀比羅宮ですが、その中でも「書院」をご紹介します。

金刀比羅宮表書院は江戸時代前期の住宅です。 金刀比羅宮はもともと金毘羅大権現と呼ばれ航海安全の守護神として信仰を集め、金光院松尾寺の住職が別当を務めていました。明治維新の廃仏毀釈で仏教色が一掃されて金刀比羅宮と改称され、金光院の客殿は表書院となり、金光院の歴代院主の居宅だった御書院は奥書院となりました。
金刀比羅宮表書院・奥書院は国の重要文化財に指定されています。

表書院は400年近く前、江戸時代前期の1654年に建てられ、桁行21.7m、梁間16.9m、入母屋造の檜皮葺(ひわだぶき)で、正面に軒唐破風が付きます。
※寺社建築の屋根の種類や特徴に関しては、以下リンクの記事で詳しくご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。

【寺院建築の楽しみ方④】屋根の種類とその形状からわかること

金刀比羅宮書院

立派な軒唐破風の金刀比羅宮表書院の入口。

内部は前列に3部屋、後列に4部屋あり、そのうち5部屋に晩年の円山応挙(まるやまおうきょ)による障壁画があります。
南側中央は大広間で、引見や役人などのために使われた虎之間です。金砂子地(きんすなごじ)に水墨によって描かれた虎図があり、水を背景に、さまざまな姿態の虎がきわめて写実的に表現されています。なかでも東面の「水呑みの虎」は名高く、表書院の代名詞ともなっています。
虎の間の向かって左側は格上の人物用の接客部屋で、竹林七賢図(ちくりんしちけんず)を描いた七賢之間です。一番奥に位置する西北隅の部屋は書院造となった格式の高い上段の間で、大床の壁に瀑布古松図(ばくふこしょうず)、帳台構(ちょうだいかまえ)に山水楼閣図(さんすいろうかく)が描かれています。

表書院には、そのほかに近代日本画家の邨田丹陵(むらたたんりょう)、 奥書院には伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)と岸岱(がんたい)による障壁画があり、 金刀比羅宮書院は四国地方の代表的な書院であり、江戸時代中期以降の歴代障壁画が伝わっている点が特徴といえます。

【「金刀比羅宮表書院・奥書院」 地図】

 

現存最古の芝居小屋「旧金毘羅大芝居(通称:金丸座)」

金刀比羅宮の参道途中の門前町には、1835年に建てられた現存最古の芝居小屋「旧金毘羅大芝居(きゅうこんぴらおおしばい) 通称:金丸座(かなまるざ)」がのこされており、これも国の重要文化財に指定されています。

旧金毘羅大芝居金丸座

昔の芝居小屋の雰囲気をそのままのこす旧金毘羅大芝居は、現役で歌舞伎公演も行われます。

江戸時代中頃から金刀比羅宮の祭礼のたびに市が開かれ、仮設の芝居小屋で歌舞伎などの興行が行われていました。富くじ場を兼ねた瓦葺の定小屋(じょうごや)の設置を金刀比羅宮別当の金光院に申し出て、金光院は高松藩から許可を得て、芝居小屋が建てられました。大坂三座のひとつである大西芝居(のちの浪花座)を模してつくられたと伝わっています。

近代になると小屋は金光院から離れ、所有者や名称がたびたび変わりました。1975年に現在地に移築され、併せて客席、舞台、楽屋回りが当初の姿に復元されました。正面の高い庇の下に木戸口(きどぐち)と札場(ふだば)、両端に履物をあずける下足場(げそくば)があり、屋根上には櫓(やぐら)を組みます。 内部客席の大半を平場の桝席(ますせき)が占め、平場の両側に役者の通る花道が伸びています。壁際には桟敷が並びます。舞台は回り舞台になっていて、床下の奈落で人力で回転させています。そのほかさまざまな古い舞台装置がのこされています。

【「旧金毘羅大芝居(通称:金丸座)」 地図】

 

金刀比羅宮にはたくさんの見どころがあり、旅館や店舗が立ち並ぶ門前町もあることから、お遍路さんを含め多くの人が一度は訪れてみたい場所だと思います。本殿への参拝だけではなく、歴史的視点でじっくり巡ってみると、価値の高い多くの文化財とめぐり会うことができます。

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この記事を書いた人

建築・不動産・旅のテーマが得意なライター。社寺系ゼネコンに勤務経験があり、四国八十八ヶ所霊場の札所建築物の改修工事に携わったことがあります。仏教に興味があり、2022年には四国のお遍路巡礼もしました。ライターとは別名義で作家として小説も書いています。