【丈六寺】数々の国指定重要文化財がのこる「阿波の法隆寺」

徳島県徳島市にある丈六寺は、室町時代後期から江戸時代前期に繁栄した寺院です。多くの建物などが国指定重要文化財となっていることから「阿波の法隆寺」とも呼ばれ、秋は紅葉の名所としても知られています。

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「阿波の法隆寺」とも呼ばれる「丈六寺」

徳島県徳島市の丈六寺(じょうろくじ)は、細川成之(ほそかわしげゆき)によって曹洞宗の禅宗寺院として室町時代の1492年に再興され、七堂伽藍が整備され、その後江戸時代前期までたいへん繁栄した寺院です。
徳島市中心部の徳島駅からは、JR利用であれば牟岐線「地蔵橋駅」から徒歩で約30分、路線バス利用であれば徳島バス「八多・五滝・大久保」行き「丈六北」下車して徒歩すぐです。
お遍路道中だと、徳島市街地から19番札所恩山寺に向かう途中で少しそれた立地で、歩きお遍路さんでも立ち寄れるような距離でアクセスも悪くはないので、時間と体力に余裕があればぜひ訪れてみていただきたいお寺のひとつです。

丈六寺には、多数の文化財があり、国指定重要文化財には「三門」「本堂」「観音堂」「経蔵」「聖観音坐像」「細川成之肖像」があり、そのほかにも徳島県や徳島市の登録有形文化財も多くのこっています。文化財がたくさんあることから「阿波の法隆寺」とも呼ばれています。

 

独特の哀愁を感じてしまう三門

丈六寺の三門は、室町時代末期に細川成之による伽藍造営の時に建てられたと伝わり、国指定重要文化財になっています。

入母屋造の2階建二重門で3間3戸、上下端部を丸く細めた粽柱(ちまきばし)の円柱が礎盤(そばん)の上に立っています。柱間は、両側面の前側1間を壁とする以外は吹き放しで、扉もなく開放されています。 2階の柱間は1階よりもせばめ、高欄付きの回り縁と、正面に花頭窓(かとうまど)が設けられています。内部には須弥壇があり羅漢像を安置しているといいます。小型ながらも中世末期の禅宗三門の形態を今に留めています。

この門はじっと見ていると、私は不思議な気持ちにさせられます。よく見るお寺の山門よりは大きく立派ではありますが、京都などの大寺院で見る門よりは小さく、威圧感もありません。四国八十八ヶ所霊場の札所ではいろいろなパターンの門がありますが、似たような門はひとつも思い出せません。宗派が禅宗ということはあるかも知れませんが、独特の佇まいをしています。
これは推測ですが、建てられた時代の背景に理由がありそうです。室町時代の末期ということはいわゆる戦国時代のはじまりでもあり、おそらく当時の世相はなんとなく「漠然とした不安」のなかにあったはずで、そうした時代の気分がこの門に独特の哀愁を与えているような気がして仕方がありません。だとするとその感覚がわずかながら500年後まで伝わっていることに驚くばかりです。

ところで、寺院の入口には門があることが一般的ですが、そのほとんどが「山門(さんもん)」という名称です。これは寺院の名称は〇〇山〇〇寺と山号が付いているため、寺院に足を踏み入れるのは山に入るのと同じことであるという意味から、入口の門は「山に出入りする門」で「山門」と表記されます。

丈六寺のように「三門(さんもん)」という名称が使われる場合、諸説ありますが「三解脱門(さんげだつもん)」を意味しているとされています。3つの煩悩「貪欲(とんよく=むさぼり)、瞋恚(しんに=怒り)、愚痴(ぐち=おろかさ)」の三悪を解脱する悟りの境地を表しています。この3つの煩悩を、門の3間の開口部で表現しているともいいます。
三門は禅宗に多い名称・形態で、京都に集中している臨済宗の本山でよく見かけますが、浄土宗では東京芝の増上寺、京都の知恩院などの三門も有名です。

丈六寺_三門

寺院建築では形状に宗教的意味が込められていることがあります。三門では3間の開口部に着目してみてください。

 

観音堂に安置されている聖観音坐像と丈六の意味

丈六寺の観音堂は、江戸時代初期の1648年に建てられた四方1間の業所付き禅宗仏殿で、寄棟造の本瓦葺です。
※寺院建築の屋根の種類や形状に関しては、以下リンクの記事で詳しくご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。

【寺院建築の楽しみ方④】屋根の種類とその形状からわかること

裳階(もこし)は正面3間、側面4間です。裳階とは庇(ひさし)のことで、この観音堂の場合は2階建ての1階に見える部分のことです。本体のようにも見えますが、あくまでも本体を守る屋根と建物という役割です。

丈六寺_観音堂

丈六の聖観音坐像が祀られている観音堂。1階に見える部分はあくまでも庇の役割です。

正面の中央柱間に両開きの唐戸があり、戸の上方に蓮華唐草文様の彫刻がはめられています。
内部は、中央1間に板張り床の内陣があり、 像高310.6cmで寸法が丈六の大きな聖観音坐像が安置されています。
仏像でよく「丈六」という呼び方がありますが、高さが1丈6尺ある、という意味です。1尺はおよそ30.3cmで、1丈は10尺なので約3mです。6尺は2mに近いので、1丈6尺ではおよそ5mの高さの仏像を指します。しかし、こちらの観音堂の聖観音菩薩の座像は3mあまりです。これだけで判断すると丈六とはいえない寸法ですが、実は座像は座った状態なので、立つと5mはあるということで、座像の場合は3m前後あれば丈六の仏像と呼ばれていて、丈六寺の寺名の由来にもなっています。

 

丈六寺には、ご紹介した三門、観音堂、聖観音坐像以外にも多くの文化財がのこされていて、徳島県の歴史や宗教文化について知る上で非常に重要なお寺ですので、ぜひ一度は足を運ばれてみてください。

 

【「丈六寺」 地図】

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この記事を書いた人

建築・不動産・旅のテーマが得意なライター。社寺系ゼネコンに勤務経験があり、四国八十八ヶ所霊場の札所建築物の改修工事に携わったことがあります。仏教に興味があり、2022年には四国のお遍路巡礼もしました。ライターとは別名義で作家として小説も書いています。