【観智院】善通寺の塔頭筆頭で2023年に秘仏「十一面観世音菩薩」の約100年ぶりの御開帳

75番札所善通寺の東院と西院の間にある観智院は、善通寺の塔頭筆頭であった歴史があり、参道の長い屋根は目を見張るものがあります。2023年5月15日~6月15日まで秘仏「十一面観世音菩薩」が特別に御開帳されました。

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善通寺の塔頭筆頭「観智院」

観智院(かんちいん)は、75番札所善通寺の東院と西院の間にあるお寺で、善通寺の塔頭(たっちゅう)です。
塔頭とは、もともとは高僧を祀るために作られたものでしたが、現在では役職を終えた老僧が隠居したり、本山寺院の末寺として寺務を行ったりする場所になっています。善通寺のような本山クラスの規模の大きい寺院ではよく見かけます。
平安時代に善通寺の境内には49もの塔頭が並んでいたといい、観智院はその中でも筆頭だったとのことです。

807年に弘法大師空海によって開かれ、御本尊は十一面観世音菩薩で、さぬき三十三観音霊場の25番札所になっています。
御本尊は「子安観音」とも呼ばれ、讃岐高松藩主・松平公の側女が尼となって住んでいた庵寺の御本尊を移したものと伝わっています。子安観音は安産や多産のご利益がある観音さまです。

観智院_入口

75番札所善通寺参拝時に、東院と西院の間でお見逃しのないように。

 

立派な唐破風タイプの屋根付き参道

観智院を寺院建築の視点でみてみると、最も特徴的なのが、本堂までの参道全体が唐破風(からはふ)タイプの屋根に覆われていることです。四国八十八ヶ所霊場の札所でもこのような形は見かけませんし、全国の寺院を見渡しても記憶にないほどです。善通寺の御影堂前に似たようなものがありますが、それより大きいほどです。本堂とは繋がっていないので向拝(こうはい)とはいえませんし、廊下にしては立派で豪華です。長さは10m近くあるでしょうか。
いずれにしても、これだけの長さの唐破風を作るのはかなりの労力がかかります。わかりやすいのは、唐破風専用の「茨垂木(いばらたるき)」です。

観智院_唐破風タイプ屋根

観智院を訪れた際は参道の屋根に注目してみてください。

茨垂木

茨垂木の参考写真です。破風板の奥の垂木を取り出すと、このようなアール形になっています。

それぞれの垂木を1本の木材から取り出さなくてはならないので、かなりの手間と時間と費用がかかってしまいます。
これが長くなればなるほど大変になりますので、参道の雨除けのためだけに造ったとは思えません。それに、本堂で何か大規模な工事をしようとすると、この長い唐破風が邪魔になってしまい、ことによっては解体しないといけなくなります。そう考えると、唐破風はやはり仏さまか弘法大師空海が通られる場所として想定し造られたと考えるのが自然かと思います。
※寺院建築の屋根の特徴や装飾に関しては、以下URLの記事で詳しくご紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください。

【寺院建築の楽しみ方④】屋根の種類とその形状からわかること

参道の本堂に向かって右側には、小山の上に大きな弘法大師空海の修行大師像があります。このお像の周りを一周すると、四国八十八ヶ所霊場のお遍路を巡礼したのと同じ功徳があるとのことです。像の下の小山は納骨堂になっていて、宗派を問わずに納骨できるようになっています。

 

秘仏「十一面観世音菩薩」の約100年ぶりの御開帳

観智院は、大正2年(1913年)に火災に遭い全焼し、12年後の大正14年(1925年)に再建されています。再建するにあたり、高松市の大護寺から移ってきたのが現在の御本尊の「十一面観世音菩薩」で秘仏です。平安時代の一木造で、高さは77cmの仏像です。脇には十一面観世音菩薩を守り、補佐する役割を担う不動明王と弘法大師の像も並んでいます。

秘仏でいっさい御開帳はされなかったのですが、2023年の弘法大師空海の生誕1250年を記念して、観智院に移ってきて以来はじめての約100年ぶりに特別に御開帳されました。
御開帳期間は2023年5月15日~6月15日までの1ヶ月間限定で、その後は一般公開をする予定はないとのことなので、ぜひこの機会にお参りされてください。

 

四国八十八ヶ所霊場を巡る際には、札所の周辺に塔頭寺院などのゆかりの史跡があることが多いです。先を急ぎすぎず、いろいろな史跡や建築物に目を向けてみると、新しい発見や出会いがあると思います。

 

【「観智院」 地図】

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この記事を書いた人

建築・不動産・旅のテーマが得意なライター。社寺系ゼネコンに勤務経験があり、四国八十八ヶ所霊場の札所建築物の改修工事に携わったことがあります。仏教に興味があり、2022年には四国のお遍路巡礼もしました。ライターとは別名義で作家として小説も書いています。