【知多四国霊場65番札所相持院→66番札所中之坊寺】「常滑焼」の産地を通るお遍路道

愛知県常滑市の知多四国霊場65番札所相持院から66番札所中之坊寺に向かうお遍路道中には、古来から日本有数の陶磁器「常滑焼」の産地を通ります。産地としての側面のみならず、特徴的な景観が話題になっています。

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日本六古窯のひとつ「常滑焼」

愛知県知多半島の南西部の常滑市(とこなめし)にある知多四国霊場65番札所相持院(そうじいん)から66番札所中之坊寺(なかのぼうじ)に向かうお遍路道は、日本で有数の古来からの陶磁器の産地「日本六古窯」のひとつとされる「常滑焼(とこなめやき)」の産業が発達した地域を通ります。

日本六古窯は以下の陶磁器の産地のことをいいます。
●越前焼(福井県)
●瀬戸焼(愛知県瀬戸市)
●常滑焼(愛知県常滑市)
●信楽焼(滋賀県甲賀市)
●丹波立杭焼(兵庫県丹波篠山市)
●備前焼(岡山県備前市)

常滑焼は、平安時代末期に始まったと伝わっており、この時代には日本六古窯の中でも最大の産地であったといわれていて、特に大型の壺や甕などが広く流通していたそうです。
その後、茶碗や植木鉢など様々な製品が作られ、江戸時代には茶の湯や生け花で使用する器や日用品としての小細工物が登場し、急須などの人気製品が生まれました。
明治時代に入ると、鉄道の建設や水路工事により、頑丈な素材が求められ、常滑焼の特徴である硬く締まった土で作られる土管の需要が高まり、大正時代には建築陶器が一世風靡し、タイルなどの生産も盛んになりました。
それぞれの時代のニーズに合わせて焼物産業が発達し続け、現代に至るまでその伝統と技術が受け継がれています。現在でも、多種多様な常滑焼の製品が様々な場面で使われ、近年では日本国内のみならず国際的にも注目されています。

常滑焼の産地の中でも、昭和初期に最も栄えた窯業集落一帯が「常滑やきもの散歩道」として整備され、現在でも多くの作家や職人が活動している現役の陶磁器産地でありながら、多くの観光客が訪れる観光地にもなっています。
陶器の廃材を利用した坂道をはじめ、煙突や窯、工場などが点在し、古い趣ある建物や特徴ある風景は写真愛好家や若い女性たちに特に人気があります。また、素敵なギャラリーやカフェ、こだわりの雑貨を取り扱うお店など新しくできた店舗が、街の魅力をさらに高めています。
迷路のような路地を散策しながら独特の景観を楽しんだり、陶芸や絵付けの体験したりと、日本の古来からの産業の歴史やものづくりのの粋などを体感することができます。

知多四国霊場巡礼において、65番札所相持院から66番札所中之坊寺の道中で、少し寄り道をすればこのエリアに立ち寄ることができますので、お遍路さんにもぜひ常滑焼の魅力を知っていただきたく、遍路道に沿って見どころをご紹介します。

常滑やきもの散歩道_地図

常滑やきもの散歩道のエリアマップを見ると、道が複雑に入り組んだ地域にたくさんの施設や見どころがあることがわかります。

 

土管と焼酎瓶が迫る「土管坂」

65番札所相持院の山門を出るとT路地がありますので、市道を西方面に進みます。約450m進んだ先の栄町7丁目の交差点を右折して市道を北に進みます。北に約270m進んだ先で、遍路道から外れて左折(西方向)すると常滑やきもの散歩道のメインエリアに入っていくことができます。

常滑やさい村交差点

常滑やきもの散歩道エリアへの分岐は常滑やさい村が目印です。

土管坂分岐

路地に入るとまた十字路がありますので、西に道なり進んでください。

分岐から約200m進んだ先に、まずはじめの見どころである「土管坂」があります。
明治時代に薪で焼かれた土管と、昭和時代初期に石炭で焼かれた焼酎瓶が壁面にびっしりと埋め込まれている坂道です。かつては、浜から丘へと続く坂道の両側に登り窯が並び、焼き上がった土管でいっぱいだったことから、この名前がつけられたそうです。
その特異な景色は、写真愛好家に好まれ、インスタ映えスポットとしても人気がでています。最近では、アニメ映画「泣きたい私は猫をかぶる」にも登場し、アニメファンの聖地になっています。

土管坂

土管や焼酎瓶が埋め込まれた壁が迫る景色はここでしか見られない特別なものです。

【「土管坂」 地図】

 

重要有形民俗文化財・近代化産業遺産「ロ号大甕」

土管坂から複雑な路地を南方向に約200m進むと、たくさんの登窯があるこのエリアでも、もっとも有名な登窯「ロ号大甕(ろごうおおがめ)」があります。明治20年(1887年)頃に築かれたとされる陶器を焼く窯で、現在は窯としては使用されていませんが、昭和49年(1974年)頃まで主に甕を焼成するために使用されていたと伝わっていて、日本で現存する登窯としては最大級のものだそうです。
設置されている地形の傾斜が約17度で、8つの窯が階段状に設置され、高さの異なる10本の煙突が設けられている規模の大きさが特徴です。 昭和57年(1982年)に国の重要有形民俗文化財に指定され、平成19年(2007年)には近代化産業遺産にも認定された貴重な文化産業遺跡なので、常滑やきもの散歩道を訪れた際にはぜひ立ち寄っていただきたいスポットのひとつです。

ロ号大甕

迷路のような路地を進んだ先にそびえる煙突の姿は圧巻です。

【「ロ号大甕」 地図】

 

陶磁器産地の建造物や雰囲気を活かしたオシャレエリア

ロ号大甕から66番札所中之坊寺方面に向かうには、土管坂方面から進んできた道を戻ります。
市道から入って西方向に進んだ十字路をこんどは北方向に進んでいくと、レンガ造りの煙突や窯跡を活用した様々なお店が並ぶエリアがあります。

常滑焼_店舗エリア

オシャレなCafeや茶碗・湯のみを扱う雑貨屋さんなどが常滑焼産地の建造物や街並みを活かして出店しています。

常滑牛乳

地域の牛乳屋さんが運営する焼き立てパンの店は、気軽に牛乳とパンを楽しむことができ、散策途中の立ち寄りに人気です。

常滑やきもの散歩道エリアの散策を楽しんだら、再度市道に出て北方向に進み、常滑市陶磁器会館がある交差点を右折して東方向に進みます。国道247号・155号に合流したら北方向に約5km進んだ先に66番札所中之坊寺があります。
※66番札所中之坊寺に関して、以下リンクの記事でご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。

【知多四国霊場66番札所中之坊寺】伝説の巨大寺院群・金蓮寺と大野城ゆかりの寺院

 

知多四国霊場65番札所相持院から66番札所中之坊寺に向かう途中の、常滑市の中心エリアには、古来から続く陶磁器産地で、近年では建造物や雰囲気を活かした新しい店舗が出店して多くの観光客が訪れる人気スポットになっています。
お遍路道中の立ち寄りにも便利なエリアですので、ぜひ常滑焼産業の歴史や景観を楽しんでみてください。

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この記事を書いた人

知多半島のお寺が好きで、知多四国霊場を中心にいろいろな霊場を巡礼し、観光やご当地グルメ(特にラーメン)も楽しんでいます。御朱印集めも趣味で、知多半島のお寺の御朱印はもちろん、全国各地の御朱印をもらいに巡り、アート御朱印などは取り寄せたりもしています。