知多四国霊場の48番札所良参寺と49番札所吉祥寺までの区間に、昔の丁石がのこされている山道史跡お遍路古道があります。江戸時代後期に知多四国霊場が開創した当時には多くのお遍路さんが行き来したと伝わる貴重な歴史資産です。
知多四国霊場48番札所良参寺から49番札所吉祥寺の区間にあるお遍路古道
知多四国霊場では、昔はお遍路さんが歩んでいたとされるお遍路古道が、現代にもいくつかのこされています。
その中で、美浜町小野浦(おのうら)地区から野間(のま)地区に抜けるお遍路古道は、知多四国霊場48番札所良参寺(りょうさんじ)から49番札所吉祥寺(きちじょうじ)までの区間の一部で、昔はたくさんのお遍路さんが行き交っていたそうです。
知多四国霊場が開創された江戸時代後期に、村間を移動するために村人が使っていた山道をお遍路さんも歩くようになり、明治時代に入ってからはお遍路さんはもちろん旅人などでもたいへんにぎわったようです。行き来する人が多くなるにつれ、道標や丁石が設置され、このうちいくつかが現代にものこっていて貴重な史跡になっています。
近年は、舗装されたきれいで大きな道が海沿いにでき、車やバスを利用してお遍路する人が急増したために、お遍路古道を歩くお遍路さんは激減し、古道が荒れていきました。
この状況を危惧した半田市の遠藤さんが、定年退職した後に、自分の慣れ親しんだお遍路古道を修復するために立ち上がり、2022年10月から現在までの期間、ほとんど一人で定期的にお遍路古道の草刈りや整備を行い、そのおかげで歩きやすい状態を維持できています。遠藤さんは、お遍路古道の整備を通して、自分の故郷やお大師さまとの縁を感じたそうです。現在も知多四国霊場の先達さんなどと一緒に、お遍路古道の整備を続けてくださっています。
※遠藤さんが主に整備をした知多四国霊場の別のお遍路古道について、以下リンクの記事で紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください。
【知多四国霊場43番札所岩屋寺→44番札所大宝寺】弘法大師空海も歩んだとされるお遍路古道
山道を抜けるお遍路古道区間の詳細道案内
このお遍路古道の道順をご紹介します。
48番札所良参寺を出て、目の前の道を西に約140m進みます。突き当たりがT字路になっていますので、右折して北方面に進みます。
山道の入口に道標など目印になるものはありませんが、コンクリートで舗装された道が分岐なくまっすぐ続いていますので、迷うことはないと思います。
山道の入口から出口までは約1100mあり、私が歩いたときは約15分の道のりでした。48番良参寺山門から49番札所吉祥寺山門前までの総区間は約20分で歩ききることができました。
頂上までは約540mを登り、そのあと約860mをなだらかに下る勾配の山道です。前半はコンクリートで舗装された登路が続いたあと、後半には自然道を進むため苦労するかもしれませんが、それほど長い距離ではないので、自分のペースで無理せずに進めば問題ないと思います。
48番札所良参寺から49番札所吉祥寺までの全行程は、距離で1.43km、徒歩で約20分の道のりです。そのうちお遍路古道の山道区間は約1.1kmです。現代のお遍路さんの多くが通っている国道247号線の海岸線のルートは、距離が約2.1kmで、徒歩だと約30分の道のりです。お遍路古道山道の方が距離・時間的に短縮できますが、日が傾くと薄暗くてもちろん街灯などはない自然の中の道なので、単独行動ではなく2名以上で通行がおすすめです。また、伊勢湾が近い海沿いのエリアなので、特に冬から春にかけての季節は、北西の季節風が吹き込み、気温が低くなるため、防寒・防風対策などはくれぐれもお気をつけください。
このお遍路古道は、現行版の知多四国霊場歩き遍路マップにも掲載されていますが、現在は通行する人が少ない道なので、初心者お遍路さんなどの不安がある人は、無理せずに国道247号を通る方がよいかもしれません。
昔のお遍路さんの往来を示す貴重な史跡「丁石」
このお遍路古道は、石柱の丁石や道標がのこされているというのが特徴です。知多四国霊場のお遍路古道ではとても珍しく、昔はいろいろなお遍路道に石柱の丁石や道標があったようですが、そのほとんどが時代の流れで撤去されてたり、埋もれてしまっています。
当時の交通事情やお遍路文化を現代に伝える貴重な史跡なので、歩かれる際はぜひ注目いただき、今後にのこしていきたいと思います。
丁石には「〇丁」という文字が刻まれていて、現在でも目視できます。この「丁」とは、江戸時代に定められた長さの単位で、現代の約109mに相当します。次の目的地までの残りの距離を示す役割で、主に江戸時代から明治時代にかけて設置されたそうです。
このお遍路古道では、特に山頂から49番札所吉祥寺にかけての区間にのこされています。
また、吉祥寺手前の分岐には、石柱の道標がそのままの形で寺院の方向を示しています。昔のお遍路さんもこの道を歩んでいたことを想像してみると、お遍路文化への理解がより深まると思います。
知多四国霊場48番札所良参寺から49番札所吉祥寺までの区間にあるお遍路古道は、知多四国霊場がにぎわっていた昔の情景がイメージできる史跡でもあります。地元の人の厚意で、お遍路さんのために整備・維持管理されていますので、感謝を忘れずに、お遍路道歩きを楽しんでください。
※札所順だとひとつ前の47番札所持宝院から48番札所良参寺の区間、49番札所吉祥寺から56番札所瑞境寺の区間にもお遍路古道がのこされており、以下リンクの記事で紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。
【知多四国霊場47番札所持宝院→48番札所良参寺】風光明媚な切通しを通るお遍路古道
【知多四国霊場49番札所吉祥寺→56番札所瑞境寺】昔の道標・丁石がのこるお遍路古道
※49番札所吉祥寺の詳細情報と特徴的なアート御朱印に関して、以下リンクのオーダーメイド納経帳・御朱印帳「千年帳」の記事でご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。
【御朱印情報】知多四国霊場49番札所「吉祥寺」の心が伝わるアート御朱印