知多四国霊場の49番札所吉祥寺と56番札所瑞境寺までの区間に、昔の道標や丁石がのこる山道のお遍路古道があります。江戸時代後期に開創した知多四国霊場の当時の面影をのこしお遍路の歴史を物語る貴重な史跡です。
知多四国霊場49番札所吉祥寺から56番札所瑞境寺の区間にあるお遍路古道
知多四国霊場の札所と札所を結ぶお遍路道の中には、昔からお遍路さんが通っていたお遍路古道が、現在でも残っている区間があります。
知多四国霊場49番札所吉祥寺(きちじょうじ)から56番札所瑞境寺(ずいきょうじ)に向かうお遍路道の区間の一部、愛知県美浜町野間地域を北上するお遍路古道は、昔は多くのお遍路さんが行き交っていたそうです。
知多四国霊場が開創された江戸時代後期には、野間地域の海沿いは橋や道の整備が十分ではなかったため、最短で行き来できる村人が使っていた山道をお遍路さんも歩くようになり、明治時代に入ってからもお遍路さんが往来するお遍路道としての役割がありました。お遍路さんが通る道になったことにより、道標や丁石も設置され、わずかではありますが現代もその痕跡をみることができます。
現代では、海側に舗装された綺麗な道が整備されたことや、車やバスを利用してお遍路をする人が増え、歩いてお遍路する人が減ったことなどの事情で、お遍路古道を歩くお遍路さんは激減し、古道が荒れてゆきました。
ですが、近年になって、お遍路の文化や史跡を守ろうと、知多四国霊場の先達さんが中心になってお遍路古道を整備保存する活動が行われ、この区間の道が守られています。
※49番札所吉祥寺の前の47番札所持宝印と48番札所良参寺との間のお遍路古道に関して、以下リンクの記事でご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。
【知多四国霊場47番札所持宝院→48番札所良参寺】風光明媚な切通しを通るお遍路古道
【知多四国霊場48番札所良参寺→49番札所吉祥寺】昔の丁石がのこる史跡お遍路古道
切通しの山道を進むお遍路古道行程詳細
このお遍路古道を49番札所吉祥寺から道順を追ってご紹介していきます。
※49番札所吉祥寺の詳細情報と特徴的なアート御朱印に関して、以下リンクのオーダーメイド納経帳・御朱印帳「千年帳」の記事でご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。
【御朱印情報】知多四国霊場49番札所「吉祥寺」の心が伝わるアート御朱印
49番札所吉祥寺の山門を出て左折し、東方面に約50m進むと電柱脇に知多四国霊場の道標がありますので、そのまま道なりに東に進みます。
上の写真の道標からさらに約20m東方面に進むと、左側に路地が見えてきますので、左折し北方面に進みます。電柱脇には知多四国霊場の黄色い看板が設置されていますので、目印にして左折し山道に入っていきます。
山道の入口から出口までは約300mで、最初は峠の頂上までゆるやかな上り坂が50mほど、その後は250mほどのなだらかな下り坂が続きます。勾配はゆるやかで、冒頭の写真で見ていただいたような切通しの豊かな自然と昔ながらの古道の雰囲気を楽しみながら歩くことができます。
写真では落ち葉が多くてわかりづらいですが、路面はコンクリート舗装もされていて、未舗装路に慣れていない人でも安心です。ただし、雨が降っているときなどは滑りやすいこともあるので、十分に注意してください。
短距離ですし、一本道でわかりやすいので、お遍路古道が初めてだというお遍路さんがチャレンジするのにもおすすめの区間です。
49番札所吉祥寺から56番札所瑞境寺までの全行程は約690mで、徒歩約10分程の道のりです。そのうちお遍路古道の山道区間は約300mです。
現代で多くのお遍路さんが主に通っているルートは、49番札所吉祥寺の山門を右折し約300m西に向かい、県道247号線の手前にある旧常滑街道を北に進み、札所番号順に50番札所大御堂寺(おおみどうじ)に向かう道です。このルートでは49番札所吉祥寺から50番札所大御堂寺までの全行程は約1.5kmで、徒歩約20分の道のりです。
お遍路古道を進むルートは現行版の知多四国霊場歩き遍路マップにも掲載されており、49番札所の次は56番→52番→53番→50番→51番→56番→57番札所の順で回るのが距離が短く効率的で、昔のお遍路さんはこちらのルートの方が一般的だったようです。
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昔のお遍路さんがたどっていたルートをぜひ一度は歩いてみていただきたいです。
ただし、距離が短いとはいえ山道ですので、特に初心者お遍路さんは安全を考慮して複数人で歩く、暗い時間帯や悪天候のときはさけるなどしていただければ安心だと思います。
※野間エリアの5つの札所に関して、以下リンクの記事でご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。
【知多四国霊場】知多半島の人気観光スポットにもなっている源氏ゆかりの「野間の5ヶ寺」
遍路の歴史を物語る道標・丁石
このお遍路古道でぜひ注目していただきたいのが、道順案内の際に触れた昔の道標です。昔のお遍路さんの往来の歴史を感じることができ、お遍路文化を偲ぶことができます。
かつては知多四国霊場の順路にたくさん設置されていた道標ですが、時代の流れとともに新しい道ができ順路が変わって撤去されるなどして、現存するものはわずかになっていますが、このお遍路古道には美しく保存されたものがいくつか残っていますので、ぜひじっくりと見てみてください。
知多四国霊場49番札所吉祥寺から56番札所瑞境寺までの道のりにあるお遍路古道は、知多四国霊場が歩きお遍路さんでにぎわっていた頃の歴史風情を感じることができる貴重な史跡です。
知多四国霊場の先達さんが中心になって、お遍路文化を残していくために定期的に整備してくださっていますので、歩くことでお遍路道の維持保存にも参画貢献してみてはいかがでしょうか。