【知多四国霊場23番札所蓮花院→24番札所徳正寺】「日本三大醸郷」のひとつを通るお遍路道

愛知県武豊町の知多四国霊場23番札所蓮花院から24番札所徳正寺に向かうお遍路道中では、江戸時代から明治時代初期にかけて味噌や醤油の製造で繁栄したエリアを通ります。知多地域の醸造文化の歴史を感じられるノスタルジックな雰囲気が人気のスポットです。

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「日本三大醸郷」のひとつ「武豊町」

愛知県武豊町の西部の海沿いの地域は、江戸時代から明治時代初期にかけて、良質な水と温暖な気候、港に近い立地条件に恵まれ、明治19年(1886年)の鉄道(国鉄武豊線)開通も加わり、物流の拠点として発展しました。
知多地方は江戸時代に味噌や醤油などの醸造業が盛んになり、千葉県・銚子や兵庫県・龍野と並ぶ「日本三大醸郷」のひとつとして知られるようになり、特に武豊町では最盛期には50以上の蔵が立ち並び、全国的有数の醸造地域でした。

武豊町で盛んに生産されているのは「赤味噌」です。
赤味噌とは、全国的には見た目が赤っぽい味噌全般を赤味噌と呼びますが、愛知県では原料が大豆・塩・水のみで、米を使用せず大豆に麹を付けた「豆麹(まめこうじ)」を使用した熟成期間が長い(1年~3年)豆味噌のことをいいます。
長期間熟成したコク深い味が特徴で、愛知県内では味噌汁から炒め物など様々な料理に使われます。

また、醤油は中部地方特有の「たまり醤油」と呼ばれる醤油の一種が広く生産され、濃厚でまろやかな味わいが特徴で、特に刺身などのつけ醤油としての用途が一般的です。

味噌と醤油は大豆と発酵技術を共通点としており、多くの蔵で両方が効率的に生産されています。
江戸時代には大豆は全国各地で栽培されていましたが、気候条件などによる収量の不安定さがありました。
武豊町では、武豊港を活用した海運により、全国各地から大豆を買い付けることにより供給が安定し、味噌や醤油を定常的に生産することができました。明治時代には鉄道が開通したことで、生産した味噌や醤油を全国に出荷することにも有利な条件が整い、醸造業が大いに発展しました。

時代が進み、同じ愛知県内の名古屋港が発展したことにより、武豊港の物流拠点としての重要性が低下し、武豊町の蔵や商店の数が減少していくことになります。
ただし、現代でも武豊町には歴史的な醸造所が残り、町の文化として観光資源としても活用されています。

知多四国霊場巡礼において、23番札所蓮花院(れんげいん)から24番札所徳正寺(とくしょうじ)までのお遍路道中に、味噌や醤油の蔵が点在し、立ち寄り観光ができますので、お遍路さんにも武豊町の魅力をぜひ知っていただきたく、遍路道順にそって見どころなどをご紹介します。

武豊町観光マップ

海沿いのエリアにかたまっている醸造蔵を紹介する観光マップも設置されています。

 

味噌醸造の歴史を感じる「中定商店伝承館」

知多四国霊場23番札所蓮花院を出て県道247号線を南に進みます。約280m進み小迎の交差点を東に進み、約20m進むと最初の見どころの「中定商店(なかさだしょうてん)」の蔵が見えてきます。

武豊町_小迎交差点分岐

県道247号線の小迎交差点で、遍路道からそれて左折し、少し進んだ先に「中定商店」があります。

中定商店は、明治12年(1879年)創業の老舗味噌商店です。
「大五蔵(だいごくら)」と呼ばれる大正5年(1916年)に塩蔵として建築された建物を再利用し、味噌や醤油の資料を展示した「伝承館」にリニューアルし、蔵の歴史を今に伝えています。直売所では、味噌や醤油、麹を使った商品など、お土産にもおすすめのいろいろな種類の商品が販売されており、観光客にも人気です。

中定商店伝承館_外観

中定商店の伝承館は歴史を感じさせてくれる外観です。

中定商店伝承館_樽

伝承館の駐車スペースにはかつて使用されていた巨大な木樽が置かれていて写真映えします。

中定商店に立ち寄ったあとは、再び県道247号線の小迎交差点まで戻り、南に進みます。

 

貴重な鉄道遺産「転車台」

小迎交差点から県道247号線を約1.1km南下し、里中交差点を左折するとすぐに次の見どころである「転車台」があります。

この転車台は、昭和5年(1930年)開業した武豊港駅にかつて設置されていました。2本のレールが直角に交わる直角二線式を採用した転車台で、蒸気機関車の方向転換のために使われていたものです。この方式の転車台は国内ではここにしか現存しておらず、国の登録有形文化財にも指定されています。

武豊町_里中交差点

かつてはこの道に鉄道の線路が敷設されていました。

武豊町_転車台

20年ほど前に、小学生が授業の歴史探訪でこの地域を訪れた際に、埋もれていた転車台を発見し、整備保存されたというおもしろいエピソードが残っています。

転車台が稼働していた当時は2基設置されていたそうですが、現存するのは1基です。当時の鉄道輸送を支えた重要な設備として保存・展示されており、いつでも見学が可能で、鉄道ファンや歴史愛好者が訪れる知る人ぞ知るスポットとなっています。
地域の鉄道史を感じることができる遺産ですので、お遍路さんもぜひ立ち寄って見学してみていただきたいです。

武豊町_転車台_石碑

転車台前の石碑には転車台の歴史や詳細情報が刻まれています。

 

お遍路さんの休憩にも人気の「まちの駅 味の蔵たけとよ」

転車台がある里中交差点からさらに東に約100m進んだ右側に、3つ目の見どころである「まちの駅 味の蔵たけとよ」が見えてきます。

まちの駅 味の蔵たけとよは、地域の特産品である味噌や醤油をはじめ、地元で採れた新鮮な農産物などを販売しており、フードコートでは武豊の味噌を使った料理などを提供している観光施設です。施設内には休憩スペースもあり、お遍路道中や観光の合間に一息つける場所としてもたくさんの人に利用されています。
武豊町内のいろいろな蔵の味噌や醤油がラインナップされていますので、お気に入りの味を見つけてみてください。

まちの駅味の蔵たけとよ_外観

朝9時に開店なので、朝の早くから巡礼するお遍路さんの休憩にも便利です。

まちの駅味の蔵たけとよ_食事

地元で採れた新鮮な魚と特産の味噌を使った定食が、お遍路の仲間うちで人気です。

まちの駅 味の蔵たけとよからは、再度県道247号線に戻り、里中交差点から南に約130m進みます。泉万醸造株式会社の工場が目印の西に入る路地を約120m進み、右折し20m進むと知多四国霊場24番札所徳正寺に到着です。

泉万醸造

泉万醸造は武豊町の中では規模の大きな醸造所で、道に掲げられたレトロな看板が目を引きます。

知多四国霊場24番札所徳正寺

24番札所徳正寺の檀家さんは、醸造関係の人が多いそうです。

 

愛知県武豊町の西部にある知多四国霊場23番札所蓮華院から24番札所徳正寺までのお遍路道中では、江戸時代から続く味噌や醤油の醸造で繁栄した地域の様子を見ることができます。現在でも歴史的価値がある蔵が多く立ち並んでいてフォトスポットとしても人気がありますので、お遍路中にぜひ散策してみていただきたいです。
24番札所徳正寺の周りには味噌や醤油を扱う商店もたくさんありますので、お遍路土産にもおすすめです。

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この記事を書いた人

知多半島のお寺が好きで、知多四国霊場を中心にいろいろな霊場を巡礼し、観光やご当地グルメ(特にラーメン)も楽しんでいます。御朱印集めも趣味で、知多半島のお寺の御朱印はもちろん、全国各地の御朱印をもらいに巡り、アート御朱印などは取り寄せたりもしています。