香川県讃岐國に入ってからしばらく見かけなかった「丸型ポスト」を久々に中讃地域で発見しました。このエリアの遍路道には不思議な道標がいくつかあり、意味を考えこみながら歩きました。
香川県の中央「中讃地域」で久々に「丸型ポスト」を発見
香川県は大きく3つの地域にわけることができ、「東讃(とうさん)」「中讃(ちゅうさん)」「西讃(せいさん)」のそれぞれの地域に区分されています。
ここまでの香川県の遍路道は、西側「西讃地域」に属する観音寺市から三豊市を歩き、善通寺市から「中讃地域」に入り、多度津町と丸亀市を通過して、78番札所郷照寺がある宇多津町までたどり着きました。
この間、遍路道中で私が注目していた「丸型ポスト」を見かけることがなく、香川県には存在していないのかとも思っていたのですが、丸亀市で久々に発見しました。
この「秋寅の館(あきとらのやかた)」は、丸亀出身の「秋山寅吉」が農機具・鍛冶を扱う鉄の商売を当地で始め、大正後期から昭和初期に建立された商家を、戦時中は解体保存もして現代に残している建物なのだそうです。
平成に入るまでは「秋山寅吉商店」の本社として使われていたそうで、現在は地域活性化の拠点として、展示・保存・イベント活用などがされているとのこと。
このような歴史を刻んできた建物には、やっぱり丸型ポストが似合います。
【「秋寅の館」 地図】
ということで、順番が前後してしまいますが、私が遍路道で丸型ポストに注目してきた理由と基礎知識をどうぞ。
「丸型ポスト」=「郵便差出箱1号(丸型)」とは
ここで「丸型ポスト」とよんでいるポストですが、正式名称は「郵便差出箱1号(丸型)」です。
まずは、少しおかたいですが、基礎知識から。
日本で郵便制度が始まったのは明治4年(1871年)年で、このときに日本で最初のポストも誕生しました。
当初は木製の簡易なものでしたが、明治34年(1901年)に火事に強い鉄製の赤色丸型ポストができました。
こポストを「赤色」に塗ったのはポストの位置をわかりやすくするため、かどを丸くしたのは通行のじゃまにならないようにという理由からでした。
昭和の戦時体制下では物資不足のため、コンクリートや陶器など、代用の資材を用いたポストが出現しましたが、昭和20年(1945年)に終戦をむかえ、再び鉄製ポストが製造され始め、全国的に普及したのが「郵便差出箱1号(丸型)」です。
その後、ポスト内に収集袋を吊り下げることにより効率よく回収できる「角型ポスト」が開発されたことにより、昭和45年(1970年)に丸型ポストの製造・設置が終了し、現存する丸型ポストは全国で5000~6000基といわれていて、昭和初期の歴史を感じられるある意味「文化財」となっているのです。
今ではマニアともよべるような「丸型ポストファン」もいるほどのようですが、私は遍路を始めるまで興味があったわけではなく、たまたま丸型ポストが好きな知人がいたことと、遍路出発地点のJR板東駅に丸型ポストがあったことがきっかけで、遍路道沿いの丸型ポストに着目するようになりました。
※遍路スタートの「JR板東駅」の様子は、以下記事もぜひご覧ください。
【JR高徳線板東駅→1番札所霊山寺】遍路初心者立ち寄り必須の店
宇多津の旧街道の不思議な道標地帯を予感させる丸型ポスト
78番札所郷照寺を出発して、道幅が狭くて古い建物が立ち並ぶ旧街道らしき遍路道を進んでいきます。
街並み的には丸型ポストがあってしかるべきという環境で、期待通りに丸型ポストを発見しました。
今思えば、この丸型ポストはここからの遍路道に存在する不思議な道標の数々の始まりを告げていてくれたのだと思います。
【「宇多津網の浦郵便局」 地図】
ということで、丸型ポスト発見地点からほど近くにあった道標からご紹介です。
右下の道標には「88 大窪寺 88km」と示されています。
私がこれを見たときには、結願の88番札所「大窪寺」を教えてくれるのはまだ気が早すぎるよね…88kmも距離があるし…としか思っていなかったのですが、あとから写真を見返していて、88番札所と距離88kmがかかっているのかもと気が付きました。
この道標を見つけたときにこの事実に気が付いていれば、もう少し感慨深かったかもしれません。
そして、しばらく進んだ先にわかりやすい立派な道標をふたつ発見です。
この道標はとてもわりやすかったのですが、注目すべきは「たけさん」という表記です。
これの意味がどうしてもわからず、この記事を書いている時点でも判明していません。
ずっと気になり続けています。
どなたか意味をご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひコメントをいただければと思います。
そして、坂出市街地を抜けていくところで発見した道標が以下写真のものです。
不思議な言葉と遭遇ですが、これは思いっきり讃岐弁で案内をしてくれています。
「けん」は、理由の「~から」を意味しています。
「まい」は、勧誘の「~したら?」を意味しています。
ということで、共通語に直訳してみると、
「79番札所高照院まで もうちょっとだから 頑張ってみたら?」
ということになりますが「まい」の翻訳の仕方が難しいですね。
素直に「頑張ってね」という意味で受け取れば大丈夫です。
「まい」は、香川県を歩いていると「食べまい」「寄っていきまい」なんて言葉をよくかけていただけるので、意味を正しく理解しておいた方がよいですね。
ちなみに訳すと「食べたら?」「寄っていったら?」ということなので、意味を取り違えないようにお気を付けください。
ということで、78番札所「郷照寺」から79番札所「天皇寺」の宇多津町から坂出市の遍路道は、丸型ポストが始まりを告げてくれる不思議な道標に注目すべき区間です。
久々に丸型ポストを発見してうれしくなってしまった中讃地域の遍路道でした。
香川県讃岐國にはあとどれだけの「丸型ポスト」がお迎えしてくれるのでしょうか。
※他地域の「丸型ポスト」に関しては、以下タグリンクの記事もぜひご覧ください。