36番札所青龍寺で団体のお遍路さんに遭遇、自然たくさんの境内で聞くその読経に胸を揺さぶられた。
青龍寺にてグループ読経のしらべに感動
四国霊場八十八ヶ所巡り、それには様々な手段がある。最近は車で周る人が多い。一番伝統的でオリジナルな方法はもちろん歩き遍路だが、歩き遍路は四国八十八ヶ所霊場を1周しようと思うと、少なくとも40日程度は時間が必要で、そもそもそれほどの長期でスケジュールを空けることのできる人は少なく、時間を短縮するために車で巡礼する方法を選ぶ場合が増えてきた。
それ以外では、バスツアーという手段も割とよく行われている。2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響でバスツアーが少ないと、地元の人やリピーターのお遍路さんから聞いたが、そんな中でもお遍路さんの団体に出会うことがある。
36番札所青龍寺は、背が高い木に囲まれた本堂まで一直線に続く長い階段を登っていく。疲れた脚で階段をひとつひとつゆっくりと登っていくと、上の本堂から大人数での読経の声が聞こえてきた。周りが自然豊かで、山の木が風の中でさわさわと音をたてていた。涼しい山奥の階段の登り、自然に包まれた雰囲気ある本堂へのアプローチ。
階段の上まで着くと、お遍路さんの団体が、大師堂で読経をしていた。数分ほど続く読経を聞きながら、境内の周辺を眺めた。静かな森の中に響き渡る彼らの読経の音は理由はわからないが私をリラックスさせ、精神的な満足感に似た深い感動を与えてくれた。
個人で巡礼を進める人の中には、もしかするとグループツアーのお遍路さんに違和感を感じる人もいるかもしれない。しかし少なくとも私にとっては、このお遍路さんの団体と彼らによる読経は、とりわけ山奥に隠れるように佇む寺院の雰囲気をさらに増幅させてくれる存在となった。四国遍路を行うひとりひとりの中に、人生の中でこの巡礼を行うと決めた理由がきっと存在し、団体か個人かに差はなく、訪れる霊場のひとつひとつ、もしくはその道中において何かを感じ、何かを考えているだろう。何はともあれ、彼らが合同で行う読経は、私の胸を打った。