お遍路道から少し外れ、気になった場所を気軽に冒険しに行くことができるのも自転車遍路の良さのひとつ。せっかく高知県四万十町を訪れたので高知を代表する清流「四万十川」を目指す。
四万十川までのちょっとした冒険走行
37番札所岩本寺で参拝を終え、この日はいつもよりも幾分早めに宿にチェックインすることができた。せっかくできた時間を有効活用しない手はないので、周辺を少し探索してみることにした。
自転車を宿に置かせてもらい、まずは窪川の街を歩いてみた。窪川は昭和の雰囲気を色濃く残すこじんまりした町で、時のリズムも独特の緩やかさと共にある。中心部の商店街を散歩してみたが、日曜日のこの日はあいにくお店のほとんどが閉まっていた。「日曜日は皆休む日だ」とゲストハウスのオーナーさんが教えてくれた。田舎はゆったりしていて、私の目にはそのスローライフが羨ましく映る。
町中のお店が全部閉まっていたことで、一旦宿に戻った。しかし、せっかく高知にいるのに最後の清流といわれる四万十川を一度はこの目で見ておかなければという思いが強くなり、自転車で四万十川を目指してみることにした。
季節はちょうど秋口に差しかかり、お米の収穫時期が近づいてきていたため、田んぼの稲は黄色に色づいていた。とはいえなんだか時期的にはまだ少し早いような気がしたが、すでにトラクターでお米を収穫してる農家さんも何人か目にした。色づく稲が一面に広がる田んぼ、山、そして日本を代表する清流である四万十川。この組み合わせの中の農道に自転車を走らせる。景色と風が運ぶ香り、肌で季節を感じながら細い農道を進み、農家さんや散歩してた地元の人たちと笑顔で挨拶を交わした。自然豊かで大きな町からも離れた環境も手伝っているのだろう、到着した四万十川の水はどこまでも澄んでいてとても美しく、今すぐに飛び込んで泳ぎたくなった。空気が美味しくて気持ちいい、人も優しい、のどかな風景もたまらない。時にはお遍路道を少し外れ、ちょっと離れたところを気軽に探検してみると良い。そこで出会う風景は、ルートの固定されたバスツアーなどではなかなか叶わない、自転車遍路で実現できる特別な体験のひとつとなる。