【城山神社周辺】城山で雨乞いの祈祷を行った菅原道真と巨石遺構

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香川県坂出市の城山には、讃岐国司として赴任した菅原道真が雨乞い祈祷を行ったと伝説があります。現在でも残る巨石遺構や地域の構造から、古代の巨石信仰と道真の時代の歴史を紐解きます。

 

香川県の巨石信仰と磐座

聖地の成り立ちには、様々な要因がありますが、中でも巨石信仰の聖地は太古からのものが世界各地で見られます。日本では、巨石は神が降り立つ「磐座(いわくら)」として崇められてきました。

ご存知のように、讃岐の地質は、古い花崗岩の岩盤から成り立っているところが多く、屋島のようなメサと、それが侵食されてできたビュートと呼ばれるおむすび型の山が数多くあります。また、庵治半島のような硬い花崗岩が巨大な岩盤となっているところもあります。いわば、おびただしい数の磐座の上にあるのが讃岐ともいえるわけです。

そんな中でとてもユニークな雨乞いの聖地が見られます。

 

菅原道真が雨乞いを行った城山神社

香川県坂出市にある城山神社(きやまじんじゃ)。祭神は神櫛別命 (かみくしわけのみこと)。坂出市南部に大きな山容を見せる城山(きやま)の東麓に鎮座し、その山名を社名としています。

讃岐の開拓に関係する神社として古くから社格が高く、讃岐国内では名神大社三社の一社に数えられた神社で、菅原道真はここで雨乞いを行なったと伝えられています。

社伝によれば、祭神とする神櫛別命は、景行天皇の時代に南海で悪魚を退治した功で讃岐国造に任じられ、館を城山に造営して住み、仲哀天皇8年に120歳で没し、その後、祠を建てその神霊を祀ったのが始まりとされます。

神櫛別命は、『日本書紀』にも「神櫛王(神櫛別命に同じ)は讃岐国造の祖である」と記載されています。なお『先代旧事本紀』「国造本紀」では「神櫛別命三世孫の須売保礼命が応神天皇期に讃岐国造の任を賜った」と記され、讃岐国造一族の祖とする点で一致しています。

当初は、城山一峰に残る明神原の地に鎮座していたとも伝えられ、そこには巨石数個が立てられていることから、古代からここで祭祀が行われていたと推測されます。

六国史では、貞観年間に当社に神階が授与されたと記されていて、古くから朝廷からも崇敬されていたことがわかります。麓には讃岐国府が置かれ、府内鎮護・国衙守護の性格を持っていたとも推測されています。

讃岐国司として国府にいた菅原道真は、仁和4年(888年)、ここで降雨祈願を行いました。祈願は成功し、豊作をもたらしたと伝えられています。その後は次第に衰退し、貞治元年(1362年)の細川頼之・清氏の合戦の兵火で焼失してしまいました。その際は、神体のみが印鑰の地(位置)に移されて小祠が建てられ、その後、現在地に移されました。

城山を背負った城山神社は東面して讃岐国府のほうを向いています。国府のほうから見ると、西の城山への入口が城山神社という形になっていて、これは二分の太陽が国府の御神体山である城山に沈んでいくのを見送る形になっているのがわかります。

古代の城山神社は、立石の間に城山を仰ぎ、そこに二分の太陽が没する際に、生命循環を祈る祭りが行われていたのでしょう。

城山神社

城山を背にして東面する城山神社。

讃岐府中盆地

その東方には、かつての讃岐国府があった讃岐府中の盆地が広がる。

 

【「城山神社」 地図】

 

 

巨石遺構が残る城山

城山は、坂出市と丸亀市の間に位置する標高462mの山。屋嶋城同様、古代山城である「城(き)」が築かれ、「城山」の山名はそれに由来するとされます。城山一帯では、城の遺構が見られ、国の史跡に指定されています。また、山頂付近からは旧石器も発掘されており、古くから生活が営まれていたことがわかっています。

頂上の東尾根上の明神原(明神ヶ原)は、城山神社の旧地があったとされるところですが、巨石遺構が残り、太古からの祭祀遺跡であることを伺わせます。

菅原道真が讃岐国司を務めていた時、城山神社で雨乞いの祈祷を行ったと伝えられていますが、そのときの城山神社はまさにこの場所にあり、道真は御神体である巨石に祈りを捧げたのでしょう。

雨乞いの祈祷が行われたと伝えられる聖山の巨石(磐座)では、磁気異常が見られることが多く、その周辺では植物の異常な生育や動物の異常行動が見られることもあり、そこから「神」とつながる場所と考えられたのでしょう。物理的には、岩が強い磁性を帯びていて、磁力計などによく反応するケースが見られますが、この明神原の磐座でも、150μT以上の磁気異常を観測しました。ちなみに、仁尾の紫雲出山山頂の磐座でも同様の磁気異常が観測できます。
※紫雲出山山頂の磐座に関しては、以下リンクの記事でご紹介しています。

【香川県三豊市】浦島太郎・弘法大師ゆかりの妙見宮・磐長姫からみる荘内半島の不老不死伝説

明神原遺跡 巨石群

城山明神原に点在する巨岩。

明神原遺跡 立石

巨石群の中心に位置する立石では顕著な磁気異常が観測される。

 

讃岐国司を務めた菅原道真に関する伝承を、現代にも残る地形や遺構、太陽の方向(レイライン)の要素を考慮して調べていくと、古代の信仰の形がみえてきました。巨石の磁気異常調査など現代のツールも駆使して分析すると、古代人が神と崇めていたものを科学的に考察できます。

 

【「城山 明神原遺跡」 地図】

この記事を書いた人

内田一成
聖地と呼ばれる場所に秘められた意味と意図を探求する聖地研究家。アウトドア、モータースポーツのライターでもあり、ディープなフィールドワークとデジタル機器を活用した調査を真骨頂とする。自治体の観光資源として聖地を活用する 「聖地観光研究所--レイラインプロジェクト(http://www.ley-line.net/)」を主催する。