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四国内を旅していると、白装束姿のお遍路さんを見かけたり、道ですれ違ったりすることがあります。
お遍路さんのこの格好には、どのような意味があるのでしょうか。

—– 記事に登場する主な地名・単語

白装束(しろしょうぞく)
白衣(はくい、びゃくえ)
笈摺(おいずる)
金剛杖(こんごうづえ)
同行二人(どうぎょうににん)
菅笠(すげがさ)
輪袈裟(わげさ)

 

白衣

通称 “はくい” ですが、正式には “びゃくえ” と呼びます。
「清らか」を意味する「白」を身にまとうことによって、参拝者自身が身を清める行為であり、魔除けでもあります。
古くは 「笈摺」 とも呼びました。
“おいづる” と読みますが、大きな旅荷物を笈った(おった、負った)時に、身が摺(す)れるのを防ぐ効果があったことが由来。

お遍路さんは道中で、路地・住宅街など現地住民の生活空間も通ります。
大きな荷物を背負った見知らぬ人が、自分の家の近くを歩いているとなんとなく疑念を抱いてしまう…
けれど、お遍路さん自身が見てそれとわかる白衣を着用していると、巡拝者であることがすぐわかり、住民の安心感に繋がります。
自動車を運転するドライバーからしても、お遍路さんを見かけると優しく想う心理が働くため、交通事故に巻き込まれる確率が下がる効果があるといえます。

古来、白衣を着ることは、前述の笈摺の意味もありましたが、 “死に装束” であったともいわれます。
当時の人々が知らない対岸の島・四国へ渡ることは、死と隣り合わせ。実際未開の地であり、人里離れた山の中で行き倒れて発見されなかったり、海岸を歩いている時に高潮にさらわれて命を落とすことは、珍しいことではありません。
その不幸の事態が発生した際に、死衣装(しにいしょう)を他人に着せてもらう手間をかけないために、この姿になったといわれています。

 

金剛杖

お遍路さんが手にもって歩くお杖は “こんごうづえ” と呼びます。
登坂路では歩く助け、ヘビや野犬などの危険から巡礼者を守る金剛杖は大師(弘法大師、空海)そのものであり、大師と共に旅を行うことから四国八十八ヶ所霊場参りは “同行二人(どうぎょうににん)” と呼ばれます。

金剛杖の上部には五輪が刻まれていて、五つの梵字が印されています。

下から

あ… 地
ば… 水
ら… 火
か… 風
きゃ… 空

を示します。

それぞれ真言密教の種子となるものですが、宇宙を構成する五つの元素といえば分かりやすいでしょうか。これら五つを以って空気や水、火山や大地、空ができています。
すなわち、この五つの梵字は “自然” を表します。自然のままに…
遍路に置き換えると、金剛杖の梵字と五輪が表すものは“墓標” になります。
遍路旅は白衣の項で触れたような、かつてはいつ命を落とすかわからない険しい旅。もし不幸にも亡くなってしまった時に 住民に墓標の準備を煩わせることなく、「遍路自身の出自に関わらず その土地の風習で葬ってください」 という意味が込められています。

 

菅笠

“すげがさ” は、強い日差しや雨から巡礼者の頭部を守る役割。
菅笠に限っては 「仏御免の遍路笠」 と言われ、入山門の際や読経時、僧と話す時にも被ったままで良いとされます。

菅笠に記されている字が意味するものは、

迷故三界城… 迷うが故に三界(さんかい)は城
悟故十方空… 悟るが故に十方(じっぽう)は空(くう)
本来無東西… 本来東西無く
何処有南北… 何処(いずく)んぞ南北有らん

心が迷っていると、自分の周りは高い城壁に囲われたかのように、何をしても高い壁に当たります。
しかし迷いの原因が何か判明すると、実は遮るものは何も無いことがわかります。
本来は方角に決まりはなく、進むべき方向は決められていない自由なもの。

という解釈でしょうか。

白衣の死に装束、金剛杖の墓標に対応する意味としては、菅笠は大地に葬られた巡拝者の悪霊が現世に出てこないよう、をする意味があります。
通常、仏教では死を穢(けが)れとは捉えませんが、自然に身を置いて自身を高める真言密教においては、神道と密接な関係、すなわち神仏習合が色濃く、その考えが四国遍路にも取り入れられていることが特徴といえます。

 

輪袈裟

“わげさ” と読みます。
白衣がYシャツだとすると、輪袈裟はネクタイ。巡拝時の正装になるもので、僧侶が着用する袈裟を簡略化したものになります。
輪袈裟自身は釈迦如来を表す仏具ですので、不浄の場所や殺生時は身に着けてはいけません。巡拝時の行動場所に置き換えると、前者はトイレ、後者は食事時になります。

トイレの不浄に対して食事は清浄。

対になるものですが、食事は肉や魚、野菜だとしても、それらの命を絶って我々の食事になっています。すなわち殺生にあたりますので、食事時は輪袈裟を外して頂くようにしましょう。

なお、四国遍路の食事は古来より精進に限定されていません。
体力勝負の巡礼旅。身を創る意味で、頂いた命は有難く召し上がることが良いとされていたようです。

 

※ 参拝の手順や解釈について、一般的な見解に基づき紹介しています。他にも様々な方法や解釈があることをご留意ください。

 

遍路参拝作法その11「遍路装束の意味」に関しては、以下の動画もご参考ください。

 

※すべての遍路参拝作法のまとめと動画出演者の情報は、以下リンクの記事に掲載しています。

遍路参拝作法まとめ

 

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野瀬 照山

八十八ヶ所案内人・先達であり、旅人をお迎えするゲストハウスそらうみを運営。 四国八十八ヶ所結願30回、うち歩き遍路12回。 四国六番安楽寺出家得度。四国八十八ヶ所霊場会公認先達。 高松市一宮町で「さぬき高松ゲストハウスそらうみ(http://www.sanuki-soraumi.jp/)」を運営。